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本意見書は、意見提出用Webフォームにて送信した本文をWeb掲載用に整形したものです。参考用リンクを追加しております。

川崎市地域公共交通計画(案)」に関する意見書

2021年01月19日提出

川崎市におかけては、地域交通の課題にや感染症対策等に対応すべく、地域交通政策の立案実施に取り組んでいただきありがとうございます。人と環境にやさしい地域交通の実現に向けて取り組む本会では、かねてより交通・環境分野に関連する様々な施策を注視しているところです。昨年12月に公表された「川崎市地域公共交通計画(案)」について、下記の通りご意見を申し上げます。

なお、本意見書は本会ホームページ http://sltc.jp/file/2021/01/20210119kawasaki_chiikikotsu.html に参考資料リンクとともに掲載しておりますので、併せてご参照ください。

路線バスの改善

本案「3.4.1 市民の移動実態」でも掲げられているように、市内には路線バスが幹線交通を担っている区間がいくつかある。

中でも川崎区臨海部や、溝口駅〜宮前区向丘地区など、主に市バスが担っているこれらの区間では、混雑が恒常化し、感染症影響が出る前の2019年までは、朝の通勤通学時間帯にはバスに乗りきれない人が続出するほどになっていたことから、対策が急務と考える。

本案では「基幹バスネットワーク」としてBRTの導入などが掲げられており、取り組みに期待したいが、対象区間では例えば連接バスを導入することで、乗り心地や着席サービスを向上することができ、運転手1人あたり乗客を増やしつつ混雑緩和にも資する。自家用車から路線バスへの転換を図る上でも有効と考えられる。

ところで、本案「3.3 路線バス等における運行状況等の現状」では、路線バスの運行距離が長いと非効率であると断じているが、根拠に弱く早計と感じる。例えば、川崎駅〜小杉駅、新城駅〜鷺沼駅など両端に鉄道駅がある路線では当てはまらず、実際に乗車してみると頻繁に乗降がある路線も多く、むしろ効率的な運行になっている可能性もあるのではなかろうか。

路線を安易に断片化・短距離化するのではなく、本案「5.2 目指すべき地域公共交通ネットワークの将来像」でも掲げられているように、むしろ路線距離を伸ばしてでもバス路線の両端を鉄道駅で結節させるなど、結節機能の強化による効率化を求めたい。

同時に、川崎市内の路線バスはほぼ全区間で運賃均一制が採られている。これは運賃精算の手間を簡略化し乗降を効率化する半面、乗り換え抵抗を増大させている。路線の再編を行うには、運賃制度に起因する乗り換え抵抗を抑えるために、会社をまたいだ一日乗車券や運賃上限制を導入するといった運賃施策も必要になるだろう。

また、「路線バスの後ろに自動車等が複数台連なっている状態」が挙げられているが、こうした状態にならないようにするためには、自家用車の削減が必要である。 実際、本案では、路線バスの利用が多い区間では自家用車利用も多いと挙げられている。まさにこのような自家用車の利用を削減する施策が必要であろうから、路線バスの快適性・利便性向上と、自家用車利用を自粛させる広報等の両輪により、自家用車から路線バスへの転換策を強化していただきたい。

歩行空間と自転車走行空間の拡充

昨年来、感染症対策によりテレワークが推奨されており、実際にデスクワークを中心にテレワークに切り替える例も多いと聞いている。急遽“多摩川を越えない生活”に変わった市民も少なくないと思われるが、通勤しなくなることによる運動不足が懸念される。

交通行動の選択は環境負荷の低減に資するのと同様、健康増進にも効果的であることを前向きに意識していただき、ぜひ交通部署の担当ではないなどと言って逃げないでいただきたい。

神奈川県では「マイME-BYOカルテ」というスマートフォンアプリを使って県民の歩数情報を収集しているが、こうしたデータを取り寄せてつぶさに見ていただき、まずはコロナ禍における市民の運動量の変化を注視していただきたい。

言わずもがな、生活習慣病が蔓延すれば医療費負担を増大させ、市民の健康寿命を短縮させる。歩けない人が増えれば、将来の地域交通への負担を増大させることにもなる。将来の地域交通の健康度を高めるためにも、ぜひ買物等の日常の移動は貴重な運動の機会だと認識してもらい、歩くか自転車に乗るよう呼びかけていただきたい。

同時に、後述の風評被害もあってか昨今は休日を中心に自家用車利用が増大する傾向にあると感じており、一方で通勤時間の削減等による運動不足を埋め合わせるように、多摩川サイクリングコースなどの狭い空間に多くの市民が押し寄せている状況がある。

コロナ禍に直面する欧米の諸都市においては、車道を減らして歩道を拡大するとともに、自転車レーンを拡充する施策が速やかに実施された【『クルマ社会を問い直す100号(2020年6月号)pp.14-「新型コロナウィルスで変わる地域交通〜欧米では市民の健康をまもるために交通分野の対策を急展開〜」参照】。川崎市においても第二波・第三波と繰り返す状況において、歩く人と自転車に乗る人が安全に、かつソーシャル・ディスタンスを確保できるよう、不要不急の自家用車利用を控えるよう呼びかけるとともに、例えば公共施設の駐車場利用を制限する、仮設の自転車レーンを設置する、自転車レーンを拡充する等の施策を求めたい。

また、残念ながら本案では触れられていないが、川崎区と多摩区を中心に実施されているシェアサイクルも、二次交通の隙間を埋める重要な交通手段として一層積極的に活用してほしい。

多摩区で行われている HELLO CYCLING は、他区でもコンビニ店頭などに設置が増えていて、利用も活発だと聞いている。しかし市の公共施設などに設置されず、民間主体に留まっていることから、サイクルステーションの不足による台数不足や利便性に課題があると認識している。

まずは多摩区でという考えかもしれないが、他区でも民間ベースの取り組みを支援する意味からも、区役所や公園などの公共施設における設置場所の提供など、前向きに速やかに拡大するよう求めたい。

感染症対策

内閣官房 新型インフルエンザ等対策有識者会議においても喫煙所や飲み会・会食等での感染拡大が確認・懸念されている反面、公共交通機関に乗車中のクラスター発生事例は報告されておらず、懸念もされていないのだが、2020年前半頃からマスメディアを中心に「満員電車」が危険であるかのような風説が盛んに流されたところ、電車やバスを忌避して自家用車利用が増加する残念な事態が起きてしまっている。

逆に、前述のように欧州の諸都市では自家用車利用を抑えるための様々な施策が採られていたし、欧米では主に電車を利用している人よりも、主に自家用車を利用している人の方が感染者が多いという調査結果まで出ているという。これは乗り物の違いよりも、そもそも自家用車を利用する人は気が緩んでいるからと考えられている。

また、昨今は「医療崩壊」が叫ばれているが、同様に医療崩壊の危機に直面していた英国では、医療崩壊の対策としても不要不急の自家用車利用を自粛し、自動車の速度を落とすよう呼びかけるキャンペーンが医療従事者により展開されていた。自家用車利用に起因する交通事故がなくなれば医療機関への負担が大きく減ることや、大気汚染が新型コロナウィルスの症状を重症化させる原因になっていることが根拠に挙げられているが、川崎市においても交通事故がどれほどの救急搬送の原因になっているかや、PM2.5をはじめとする大気汚染公害の深刻さは市で数字を持っているであろうから、同じ答えに辿り着くのではなかろうか。

川崎市においては、マスコミが広めた風評被害による誤解を解くとともに、混雑が緩和された快適な公共交通サービスを提供することにより、市民の皆さんに安心して快適に公共交通を利用してもらえるよう、市民への広報および運行事業者への支援に取り組んでいただきたい。

きめ細かな統計調査の実施

本案では主にパーソントリップ(PT)調査が基礎データとして使われており、これは重要な統計調査であるが、一方で2020年から始まり急激に広がった感染症対策のように、急な変動に対する調査はどのようにされているだろうか。

少なくとも市バスの乗車データは収集できるはずだが、他の交通事業者等にも乗降等のデータ提供の協力を求める、商業施設の毎日の駐車場利用件数データの提供を求めるなど、情報収集と分析を拡充していただきたい。

今回の感染症を機に、例えば鉄道や路線バスのICカード情報や、シェアサイクルの情報なども収集する、自動車通行台数を自動計数する装置を導入するなど、簡易的でもいいから様々なデータを収集できるようにして、PT調査では把握しきれない細かな変動を把握できるようにしていただきたい。

以上

関連資料


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