持続可能な地域交通を考える会 > 意見・提案 > 川崎市「都市計画道路網の見直し方針の改定(素案)」に関する意見書 |
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本意見書は、意見提出用FAXフォームにて送信した本文をWeb掲載用に整形したものです。参考用リンクを追加しております。(市役所のWebフォームに不具合が生じていたため、本意見のみFAXにて送信しております。)
今回のように、古い道路計画を見直し、その後変化した社会情勢に適応させることは、必要かつ有意義な取り組みと考える。一方で、今回の素案にて示された具体的な改定内容を見ると、社会情勢の変化に対応しきれていないように見受けられる。各論は後述するが、根本には道路=自動車のためのもの、という考え方が根深く残っていることが原因であるように見受けられる。
その最たる例は「円滑な道路交通」という項目に表れている。自動車ばかりを円滑化させ、歩行者には迂回を強い、自転車は歩道に追いやり閉じ込めるのが昭和の道路政策であったが、その頃からあまり変わっていないというのが率直な感想である。
本案では道路交通の様々な主体のうち、自動車だけを円滑化させようとしており、歩行者や自転車利用者等の円滑な通行は全く考慮されていないようだ。
上位計画である「川崎市総合都市交通計画」や、2014年に成立した国の「交通政策基本法」などにおいて、安全の確保、環境負荷の低減などが政策目標に掲げられており、道路上においては、徒歩、自転車・自動車等の車両が役割分担し連携することを求めている。道路上でいえば、歩行者や自転車など、これまで円滑化の対象外とされてきた主体こそ円滑化させる必要があろう。
これまで散々円滑化してきた自動車に対し、今後はむしろ歩行者導線の円滑化、快適化に取り込むよう求める。
また、本案において自転車は「歩行者等」に括られている、即ち本計画においては相変わらず自転車は歩行者のなかまと位置づけられているようだが、自転車は車両であり、自動車と同様に車道走行が原則である。後述の2011年警察庁通達にも示されている通り、自転車を歩行者のなかまと誤解していた姿勢を改めることが社会の要請になっているが、残念ながら本案においてはその根本姿勢が全く改められていないようだ。
かつての「高度経済成長」時代から社会環境はすでに転換し、今後は少子高齢化時代に持続できる歩いて暮らせるまちづくりが求められている。歩行者が最優先され、自転車や路線バス、鉄軌道の利用を促進し、貨物輸送においても共同配送やモーダルシフトが求められている。上位計画である川崎市総合都市交通計画においても同様の観点が盛り込まれており、概念としては計画に盛り込まれているのだが、具体的な道路計画等には行き渡らず、今なおクルマ目線の計画が続いている状況にある。
具体策は後述するが、まずは道路構造において、クルマ偏重の状況を改めるよう求めたい。
道路をはじめとするインフラは、本案にも示されているように供用開始までに時間がかかる場合が多く、また造られてから50年、100年、それ以上使われ続けることになる。つまり今後造られる道路は今必要だからではなく、50年後、100年後まで必要になるものが求められる。
その点、今必要な対策(交差点改良等)に重点を移すことは評価できるが、一方で既存計画の見直しについては、不十分な感が否めない。
本市に限らず、これまでに全国各地で「渋滞対策」の名目で行われてきたバイパス建設や交差点拡大などが誘発需要を生み出し、結果として自動車利用を増加させてきた。
一方で、本計画案において自動車走行量の削減を目指した施策は事業所向けモビリティマネジメントが示されるに留まっているが、誘発需要への配慮がされていないままに本案が実施されれば、誘発需要により自動車台数が増加する一方で、自動車削減策の効果はごく僅かに留まり、結果として自動車利用を激増させる恐れがある。
また、羽田空港へ自家用車で60分以内に行ける範囲を拡大するという政策目標が掲げられているが、川崎市内の交通手段分担率でわずか18%の自動車が便利になるよりも、電車やバスを乗り継いで行く4割近くの市民の期待に応えるための施策を実施すべきである。 4割の市民はさて置いて、少数派のマイカー族に莫大な公金補助をするという事では、公平性の観点からも極めて疑問である。 むしろ自家用車は利用を抑制すべき対象であり、限られた道路空間を路線バスや貨物輸送などが円滑に使えるようにすべきだろう。
本計画案の基礎データにしているPT調査では平日と休日の差が見えにくいが、市内の商業地を中心に休日になると不要不急の「マイカー」が溢れ返って渋滞を引き起こし、路線バスや貨物輸送を遅延させるとともに、近隣生活環境に悪影響を与えている実情がある。しかし、そうした問題への対策は全く示されておらず、「マイカー」対策は全く行われない一方で、道路整備に加えて「エコカー」等と称して補助金等の給付が規定されるなど、自動車利用者への給付ばかりが目立つ内容になっており、むしろ自動車利用優遇策となるおそれがある。
本計画案の3つの理念を実現するためには、むしろ車道を減少し、自転車・路線バス専用レーンを確保する、PTPSを実施する等の施策を併用する事により、実質的な渋滞対策を行うよう求める。
本案において「路線バスの走行環境の改善に資する道路改良」と謳われ、その考え方は評価できるが、自動車走行空間の拡張については具体的に示されている一方で、路線バスの走行環境の改善策は示されていないようだ。
また、前述のように本案において自転車は「歩行者等」に括られているようだが、自転車は車両であり、自動車と同様に車道走行が原則である。2011年10月に出された警察庁通達「良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進について」において、『従来、自転車利用者は、多くの歩道で普通自転車歩道通行可の交通規制が実施されていたこともあり、道路交通の場においては歩行者と同様の取扱いをされるものであるという誤解が生じていたところであるが、近年の自転車に係る交通状況を踏まえ、車道を通行する自転車の安全と歩道を通行する歩行者の安全の双方を確保するため、今一度、自転車は「車両」であるということを、自転車利用者のみならず、自動車等の運転者を始め交通社会を構成する全ての者に徹底させる』ことが改めて確認された。2016年12月には「自転車活用推進法」が制定され、川崎市においても「自転車利用基本方針」が検討されているところである。
ところが、現状、片側2車線3車線ある道路においても、路線バスおよび自転車の走行空間はほとんど確保されていない。川崎駅と市役所前を通る川崎市を代表する道路である市役所通り・富士見通りにおいても、片側3車線の道路に朝夕のみバス優先(時間限定しかも専用ではない)、自転車においては歩道に押し込められている状況にある。
また、綱島街道には先行整備として自転車レーンが導入されたが、50km/h制限の道路において自転車レーンの幅が非常に狭く、自転車で通行しづらいといった問題点も聞かれる。
具体例としては、今後整備される道路はもちろん、既存の道路においても、片側2車線以上ある道路では1車線を自転車専用とし、その幅は1.8m以上(駅周辺など自転車通行数の多い道路および自転車ネットワーク計画にて整備される道路においては追い抜き等を考慮し2.75m以上)を確保するよう求めたい。
また、片側2車線以上あり路線バスが日中毎時5本以上通行する道路においてはバス自転車兼用の終日優先レーンを確保すること、日中毎時10本以上の道路においては終日専用レーンを確保することを求めたい。
このように、自転車と路線バスの通行円滑化を担保するために、既存の車線配分を見直す具体策を示していただきたい。
上位計画である「川崎市総合計画」および「川崎市総合都市交通計画」においては広域拠点・地域生活拠点を定めるとともに、鉄道駅までの二次交通手段として歩行者の安全性・快適性を担保する、路線バスや自転車の通行空間を整備することが掲げられている。
道路における歩行者の安全性・快適性は、自家用乗用車いわゆるマイカーの走行量と逆の相関になるが、拠点地区において道路整備を促進し、道路容量が増加することで、自家用車利用が誘発され、歩行者や自転車利用者等が不快かつ危険にさらされるようになっては本末転倒となる。
道路計画において、拠点、鉄道駅周辺および商店街等における自家用乗用車の利用を増加させないために、これらの地域では歩行者優先の道路構造へと改め、貨物輸送等必要なものを除く一般の自動車を侵入させない計画にするよう求める。