持続可能な地域交通を考える会 > 意見・提案 > 「川崎市自転車ネットワーク計画(案)」に関する意見書 |
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川崎市内では自転車が日常生活にか欠かせない市民の足として広く活用されており、その安全・快適な走行に資する道路空間の整備は必要性の高い施策と考えます。また、本案は概ね国のガイドラインに沿った内容になっており、「自転車活用推進法」が掲げる目標の達成や近隣地域との施策との親和性も高いと考えられますから、迅速かつ広範囲の施策展開に期待しております。
一方、本会会員は日頃より市内外の自転車政策について調査検討を重ねており、また本会には自転車を日常的に利用する市民の方々の問題提起が寄せられていますが、そうした課題に照らして本案には個別に見ると課題も散見されたことから、下記の各課題について対応いただくよう求めます。
現時点で最新(H20年)のパーソントリップ調査では、川崎市の代表交通手段分担率の26%が徒歩、16%が自転車、18%が自動車となっています。また、鉄道が34%となっており、その二次交通でも多くが徒歩および自転車を利用していると考えられます。10年以上前の調査ですが、その後もクルマ離れが指摘されるようになり、また自転車の利用促進施策が展開されていることもあって、その分担率は一層高まっていることが予想されます。
また、高齢化が進むとともに健康寿命の延伸、成人病予防などに取り組まれている中で、運動習慣の構築や元気な高齢者の移動手段においても自転車の役割が期待されるところです。
ひとくちに自転車と言っても速度域が大きく異なることが予想されますし、宅配便などの牽引自転車での配達も増えており、自転車を含む軽車両の役割が増しています。
しかし従来の道路行政では、まず自動車が走る場所を確保して、その余りを狭い歩道や路側帯として、歩行者や自転車を押し込める施策が取られていました。今でもそのように整備された狭い歩道や路側帯が無数に現存していますが、本来は歩行者が歩く場所である歩道や路側帯を真っ先に確保して、次に自転車が走る場所を確保し、残りを自動車が通るという整備順に改めていかないと、歩行者や自転車利用者の安全確保は難しいでしょう。
こうした時代の変化の中で、例えば従来片側2車線以上ある道路では左側の車線を軽車両専用の緩速車線とするなど、道路の線引きの変更による安全性・快適性・円滑性確保も求められるところであり、実際に取り組まれている事例も出てきています。本案においても、車道の線引き変更といった施策を盛り込んで実施することで、自転車走行空間の充実を推進するよう求めます。
本案では自転車専用通行帯(自転車レーン)や矢羽の施工にあたり、標準の幅を定めるとともに、縮小できる規定が設けられていますが、この縮小規定が安易に実施されないよう、つまり標準またはそれ以上の幅で確保するよう求めます。
前述の通り、自転車に乗る人は老若男女様々であり、その速度域も大きく異なりますから、追い越し等が日常的に発生することが予想されます。また、愛媛県警察などでは自動車運転者に対して自転車との間隔を1.5m以上空けることを求める「思いやり1.5m運動」が展開されていますが、これは自動車による自転車への幅寄せ行為が横行していることや、自転車の転倒などの際に安全を確保するために必要な間隔であると言われています。
これらを考慮すると、自転車専用通行帯の幅1.5mは決して広いものではなく、むしろ1.5mを最低限として、これ以上確保されるべきものです。本案では幅1mまで縮小できるとなっていますが、この規定が安易に運用されないようにするとともに、むしろ幅1.5m以上確保する努力規定を設けること、また衝突時の衝撃力は速度の2乗かける重量ど求められる、つまり自動車の速度が増すほど指数関数的に危険度が増すことを考慮し、当該道路の制限速度に応じて広げるといった方策も盛り込むよう求めます。
市役所通りや新川通りなど、路線バスが多いことを理由に自転車通行空間が歩道上に設置されている道路においてすら、違法駐車が常態化している実態があります。これまでも様々な啓発活動が行われているところだと思いますが、残念ながら効果が挙がっていないようです。
せっかく自転車通行空間を整備しても、違法駐車ひとつで台無しにされてしまいます。違法駐車は自転車利用者を殺傷しかねない重大犯罪であるという認識に立ち、違法駐停車の徹底排除、および自動車利用者への再教育を求めます。
市内では軽車両(または自転車)を除く一方通行の道路にて、逆方向への車両信号機(「軽車両専用」など)の設置や「止まれ」標識の設置などが省略されているようですが、自転車にも信号機で整理された交差点であること、または一時停止が必要な交差点であることを認識できるよう、信号機や路面標示などを設けるよう求めます。
また、押しボタン式信号機については、押したらすぐに現示が変わるようにするか、または廃止する(通常の信号機にする)よう求めます。
本案ではまず地域ネットワークを整備し、その後に地域間のネットワークを整備するとされています。優先順位を定めることはいいのですが、地域内ネットワークの整備だから地域間の流動は無視するということではなく、地域内ネットワークの整備段階においても地域間の流動を考慮する必要があると考えます。
例えば、川崎市民を対象としたアンケートでは、東京都心に向かう横浜市民の流動は見えてきませんが、無視できない数が存在しているでしょう。
川崎市は大都市東京と横浜市や町田市などのベッドタウンに挟まれている地理的条件から、自転車通勤の需要が一定数あると考えられます。これは東京都心と横浜市や町田市などを結ぶ鉄道路線の利用状況から見ても明らかでしょう。しかし本案ではこうした交通流が考慮されているように見えません。
大きな移動需要が東京都心部に集中しており、その大需要地と川崎市の境には多摩川が流れていますから、おのずと自転車通勤を含む対東京の流動は予測しやすいと考えられますから、後回しにせず、本案において考慮されるべきです。
会員の生活感覚においても、多摩川に架かる橋につながる道路は朝夕を中心に自転車通勤などで通過する自転車が多いですし、日中時間帯にも県境を超える地域移動が一定数存在しているように見受けられます(各橋を通行する自転車が少なくない)。
たとえば二子橋とつながる旧大山街道では民家の軒先ぎりぎりまで車道とされており、車道端を走る自転車(道路交通法上は適法)と歩行者の交錯が日常的に存在しており、対策が急務と考えるが、本案(武蔵溝ノ口・溝の口駅周辺地域内)では対象路線から除外されており、不可解です。
少なくとも多摩川に架かる橋(大師橋、六郷橋、多摩川大橋、ガス橋、丸子橋、二子橋、新二子橋、多摩水道橋)に接続する道路(産業道路、国道15号、国道1号、ガス橋通り、綱島街道、中原街道、旧大山街道、国道246号、津久井道(世田谷通り))の指定および整備は必須と考えられますが、国道だからと言う理由で除外されてしまっている道路や、旧大山街道などのように市道にもかかわらず指定されていない道路があるのは気がかりです。
また、二ヶ領用水、平瀬川、五反田川などの川沿いの道路も、現場を見ると多くの自転車需要が存在しているように見受けられますが、これらの道路も指定漏れが多く見受けられます。
地域内ネットワークの整備において駅以外に向かう移動は全く無視してしまうのではなく、当該地域内の移動については総合的に考慮した計画にするよう求めます。
川崎市でも「ドコモ・バイクシェア」および「Hello Cycling」を使ったシェアサイクル実証実験が行われていますが、本案のPDCAはもちろん、今後の施策展開にも活かせるよう、これらシェアサイクルのODデータ(取れる場合は経路も)の提供を受けて分析し、今後の路線選定や移動需要の調査等に活かすよう求めます。
本意見書は、本会ホームページにも掲載しています。
http://sltc.jp/file/2019/20190227kawasaki_cyclenetwork.html