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「川崎市建築物における駐車施設の附置等に関する条例」の改正(案)に関する意見書

2018年05月31日提出

附置義務台数の削減を歓迎するとともに、一層の削減を求める

川崎市においては、交通手段分担率における自家用乗用車の割合が低く、旧制度下の基準による過剰な駐車場が確保されている施設を中心に、自動車駐車場が過剰・自転車駐輪場が過少の状況にある。

しかも、過剰に確保された利用の少ない附置駐車場において、値引き等により、不要不急の自家用車利用を誘発している事例も見られる。

先頃改定・策定された本市の総合都市交通計画および自転車利用基本方針では、公共交通の分担率を高め、自転車の活用を図ることが示されている。これらの政策目標に照らしても、余剰駐車場の存在を放置・助長しては悪影響が懸念されるから、本案による附置台数の削減は有意義な施策であると考える。

また、自家用車ではなく人と環境にやさしい交通手段への転換を求める本会としても、歓迎するものである。

ところで、本市では駅前などを中心に市街地が高密度に形成されており、自転車駐輪場の不足、高層建築物の増加、災害時などの帰宅困難者の滞留場所の確保などが課題になっている。市街地の貴重な土地を有効活用する観点からも、余剰となっている駐車場は当然に削減すべきであるし、公共交通や自転車での利用が多い施設などではさらに削減を進め、自家用車利用が多い施設においても自動車利用を削減する取り組みが必要と考える。

川崎市においては8年前より附置台数の段階的な緩和に取り組まれており評価できるが、かように密集した都市部において、また自動車分担率が低下している川崎市において、自動車駐車場を優先的に確保することの合理性は薄れている。今後は需要ありきの附置台数を「義務」として課すのではなく、より緩やかな目標値にするとか、自動車利用削減の取り組みを実施してそれに応じて附置台数を削減できるようにする仕組みを拡充するとか、多目的な利用をできるようにする、旧基準により確保された駐車場の他用途への転換などを進めるなど、中心市街地の貴重な土地を有効活用できる制度に改めるよう求めたい。(後述)

他用途への転換、多目的利用等により、中心市街地の貴重な土地の有効活用を

8年前の改定以降、国においては交通政策基本法自転車活用推進法の施行、川崎市においては総合計画の改定および総合都市交通計画の策定・改定があったが、これらの中では一貫して、クルマ依存からの脱却と、公共交通、徒歩、自転車の利用促進が掲げられている。

駐車場法が定められてから60年余りが経過し、社会課題や求められる政策が大きく変化している中で、駐車場附置義務については相変わらず対象を「自動車」に限り、しかも需要以上を確保するとされていることは、政策上の矛盾を生む要因にもなっている。

一方で、駐車場法では対象となる建築物の規模こそ定めているが、実際の運用は地方自治体に委ねられているものであるから、自治体の運用次第で改善できる余地もある。

ところで、本案の添付資料(参考3)で示されている調査結果を見ても、本案による改定後の基準値による台数でも、まだ駐車場が余剰気味となることが示されている。一方で、本市では自転車駐輪場が慢性的に不足しており、さらに自然災害や高層建築物の増加等により、広場のような空間の確保の重要さが増している状況にある。

こうした中で、より現実に即した柔軟な土地活用を期待したいが、附置条例により確保された場所は自動車の駐車施設にすると用途が限定されてしまっていることから、融通が利かず、中心市街地に立地する施設等における有効な土地活用の妨げにもなっている。

さらに、街中には附置駐車場以外にも民営・公営の駐車施設が多数存在しており、一層の駐車施設の過剰状態が生み出されている。

とりわけ本案での改定対象になっている商業施設や事務所については、自転車駐輪場や広場的空間の必要性が高い。一足先にシェアサイクルの普及が進み始めた東京都の都心部においては、事務所のシェアサイクル需要が高まっているとも聞かれるし、自転車通勤の推進による駐輪施設の需要増も予想される。

こうした状況の変化に対応するために、附置駐車施設において、自動車に限らず、柔軟に自転車を含む軽車両の駐車も可とするよう制度改正を求めたい。

また、旧基準により過剰に確保されている自動車駐車場については、自転車駐輪場やシェアサイクル施設、広場等の公共空間への転換促進を働き掛けるよう求めたい。

駐車場利用実態等の調査の継続実施と公表を

パーソントリップ調査や道路交通センサスなどの定期的に行われている調査だけでは間隔が開く、局地的な傾向を見づらいといった課題もある中で、今回の参考資料に掲載されていた駐車実態調査は有意義なものだった。このような実態調査はきめ細かな施策の立案・実施に有効と考えられ、今後も継続的に実施し、公表されるよう求めたい。

また、本案での改定の対象となる大規模商業施設や事務所においては、施設利用者の交通手段および駐車施設の提供・利用状況を定期的に調査し、市に報告する仕組みを設けるなど、今後の的確な計画立案および柔軟な制度運用を後押しする仕組みとなるよう求めたい。

以上

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