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『川崎市総合都市交通計画(案)』に関する意見書 目次(参照用)

  1. 自転車利用環境の改善について
    1. 国の『みんなにやさしい自転車環境』に沿った自転車利用環境整備を行うことを計画に定めること
    2. 自転車活用の専門家による指導を受けながら、自転車ネットワーク計画の策定について明確に位置づけること
  2. 自動車・道路問題について
    1. 道路の安全対策として、区域全体での抜け道利用の排除と30km/h制限(ゾーン30)を行うこと
    2. 誘発需要への対策がされていない現行の道路建設計画を白紙化し、自家用車利用抑制の方針および施策を明示すること
    3. 全ての都市計画道路において「時のアセスメント」(時代の変化を踏まえた抜本的見直し)を行うこと
    4. 自動車公害の防止計画を規定すること
    5. 電気自動車について、自家用車への助成を行わず、投資効率の高い車両に集中投資すること
  3. 鉄道・幹線公共交通について
    1. 鉄道の地下化・高架化一辺倒の計画を改めること
    2. 路線バスの地域特性に応じた利便向上策を実施すること
    3. 過度に自動車に偏っている道路上の空間配分を見直し、終日バス専用レーンやLRT、自転車レーン等の導入に向けた調査検討を始めること
    4. コミュニティ交通の導入支援を拡充すること
  4. 市民が実感できる効果的な政策立案・実施のために
    1. 本計画の実施過程で、市民参加の機会を増やすこと
    2. 市、事業者、警察、国・県・他市等との関係を明確化すること
    3. 主体的に取り組む市民と連携・協力や支援をするための仕組みをつくること
 川崎市まちづくり局交通政策室 御中 

『川崎市総合都市交通計画(案)』に関する意見書

2013年03月04日   持続可能な地域交通を考える会 (SLTc)
代表  井坂 洋士 

社会情勢の転換期を迎えた私たちにとり、21世紀型の交通・まちづくり政策へと転換する必要がある中で、今回の「川崎市総合都市交通計画」策定は時宜を得た重要な計画立案であると認識し、期待している所です。

本会では、昨年 5月30日に公開された中間取りまとめ(骨子案)意見を提出するとともに、その後も検討過程を注視してきました。今年2月の最終案(以下「本計画案」)提示を受けて、会員が市主催説明会に参加するとともに、別途独自に市民団体で勉強会を開催するなど、議論を重ねてまいりました。 それらの結果を踏まえ、下記の通りご意見を申し上げます。

自転車利用環境の改善について

国の『みんなにやさしい自転車環境』に沿った自転車利用環境整備を行うことを計画に定めること

多くの川崎市民にとり、自転車は毎日の生活に欠かせない主要交通手段のひとつである。本計画案にも示されているように、市域全体で見ても代表交通手段分担率の16%、平坦地においては2割を超える高い分担率が示されておりH20年PT)、その交通を扱う本計画には、毎日の生活に必要な移動を安全・快適に行いたい市民の期待に応えるよう求められている。

また、こうした市民の選択により人口あたりCO2排出量が全国の政令市で最も低いといった大変名誉な結果も導き出されており、市においては自転車利用者をより安全かつ快適にするための施策を行うことが、本計画案で示された理念1〜3の実現のために重要かつ不可欠なことであると考える。

ところで、国土交通省・警察庁では一昨年11月より「安全で快適な自転車利用環境の創出に向けた検討委員会」を設置して検討を進め、昨年4月に提言『みんなにやさしい自転車環境』が報告された。また、これを受けて技術的な検討が行われ、昨年11月に『安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン』が公表されている。 これらは、道路政策を所管する国交省・警察庁により設置された委員会等にて、国内の自転車政策の第一人者が集められて得られた結論である。 かように自転車利用者の多い川崎市においても、上記提言およびガイドラインに沿った自転車利用環境の整備が進められるべきであろう。

ところが、本計画案で「自転車通行環境の整備」が掲げられており、市役所通りが例示されているが、これは歩道分離によるあまり望ましくない方法が採られており、自転車の車道走行原則にも、また上記提言およびガイドラインの趣旨にも、適わないものである。

また、自転車通行環境整備のモデル地区として整備された新川崎地区においても、自転車事故の7割が集中する交差点部において自転車を歩道上に誘導しているなど、自転車本来の機能性を損なわせる上、むしろ危険を助長しかねない整備が行われている問題がある。

川崎市においては、本計画案を含めた時代遅れの歩道中心の自転車計画を見直し、2011年10月25日警察庁通達「良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の推進について」、および国交省・警察庁により示された提言・ガイドラインに沿った形で、自転車の安全かつ本来の走行性能を損なわない形での走行環境整備を行うことを求める。

自転車活用の専門家による指導を受けながら、自転車ネットワーク計画の策定について明確に位置づけること

昨年8月に発表された国交省「自転車ネットワーク計画の策定状況に関する調査結果」によると、川崎市は自転車ネットワーク計画の検討中・準備中と示されている。この内容について本計画案にも明確に示すよう求める。

また、この内容は、毎日の生活で自転車を利用している、または通勤等で自転車を利用している市民の期待に応えるものでなくてはならない。ところが、普段自転車を利用していない者がこの計画を策定しては実効性が疑わしいものになってしまうため、自転車の利活用に関する計画の策定にあたっては、自転車活用政策の専門家はもちろん、自転車活用に取り組む市内の市民団体、自転車を利用している市民により、自転車ネットワーク計画を定めることを求める。

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自動車・道路問題について

道路の安全対策として、区域全体での抜け道利用の排除と30km/h制限(ゾーン30)を行うこと

つい先月にも幸区で、子育て中の家庭に悲惨な「事故」が起きてしまったが、こうした「事故」が各地で繰り返し発生しており、抜本的な対策がほとんど取られないままになっている。

川崎市では子育て世代などの新住民が急増している一方で、子育て世代にとって必要になる子ども乗せ自転車が安全かつ快適に利用できる道路になっていない実情がある。また、高齢化が進む地域においては、高齢者の健康な生活を支える自転車が危険に晒されている状況にある。

生活道路を、その地域に用の無い自動車が抜け道として使っていることが原因のひとつと考えられるが、「交通事故」における殺傷力は重量と速度の掛け算により生じるものであり、特に自動車の速度が30km/hを超えると、被害者が死亡する危険が急激に高まることが知られている警察庁「生活道路におけるゾーン対策推進調査研究」報告書。つまり、重量の大きい自動車の速度を30km/h以下に抑えることが、地域の安全確保に必要不可欠であるが、現実には生活道路において40km/h、50km/h制限の道路が多数あり、しかも速度制限違反が常態化している有り様である。

こうした問題を解決し、生活に必要な移動を安全で快適にしたいと願う市民の期待に応えるには、生活道路に入り込む通過自動車を削減・排除するとともに、自動車の走行速度を抑制し、歩行者および自転車利用者が優先される道路環境を創出する施策、とりわけ2011年 9月20日警察庁通達「ゾーン30の推進についてに示された手法が有効であると考える。

ついては、充分な幅員の歩道が取れていない道路、および(前項の通り自転車の走行空間は車道上に確保することが前提になる)車道上に自転車の走行空間を充分に確保出来ていない道路がある地域においては、全域で制限速度を30km/h以下に規制するとともに、車道左側端に自転車が走る事を示す標示等を行い、歩道は歩行者専用とする(自歩道規制は解除する)ことで、歩行者および自転車利用者が安全かつ円滑に移動できるようにすることが、市内で増加している子育て世代および高齢者にとって不可欠な施策であると考え、これを求める。

誘発需要への対策がされていない現行の道路建設計画を白紙化し、自家用車利用抑制の方針および施策を明示すること

本計画案では、道路計画ばかりが具体的かつ極めて高い優先度で示されているが、これまでに全国各地で「渋滞対策」の名目で行われてきたバイパス建設や交差点拡大などが誘発需要を生み出し、結果として自動車利用を増加させてきた失敗を繰り返すおそれがある。

一方で、本計画案において自動車走行量の削減を目指した施策は事業所向けモビリティマネジメントが示されるに留まっており、誘発需要への配慮が全くされていない本計画案がこのまま実施されれば誘発需要により自動車台数が増加する一方で、自動車削減策の効果はごく僅かに留まり、結果として自動車利用を激増させる恐れがある。

また、羽田空港へ自家用車で60分以内に行ける範囲を拡大するという政策目標が掲げられているが、川崎市内の交通手段分担率でわずか18%の自動車が便利になるよりも、電車やバスを乗り継いで行く4割近くの市民の期待に応えるための施策を実施すべきである。 4割の市民はさて置いて、少数派のマイカー族に莫大な公金補助をするという事では、公平性の観点からも極めて疑問である。 むしろ自家用車は利用を抑制すべき対象であり、限られた道路空間を路線バスや貨物輸送などが円滑に使えるようにすべきだろう。

本計画案の基礎データにしているPT調査では平日と休日の差が見えにくいが、市内の商業地を中心に休日になると不要不急の「マイカー」が溢れ返って渋滞を引き起こし、路線バスや貨物輸送を遅延させるとともに、近隣生活環境に悪影響を与えている実情がある。しかし、そうした問題への対策は全く示されておらず、「マイカー」対策は全く行われない一方で、道路整備に加えて「エコカー」等と称して補助金等の給付が規定されるなど、自動車利用者への給付ばかりが目立つ内容になっており、むしろ自動車利用優遇策となるおそれがある。

本計画案の3つの理念を実現するためには、むしろ車道を減少し、自転車・路線バス専用レーンを確保する、PTPSを実施する等の施策を併用する事により、実質的な渋滞対策を行うよう求める

全ての都市計画道路において「時のアセスメント」(時代の変化を踏まえた抜本的見直し)を行うこと

本計画案、およびその関連計画である『都市計画マスタープラン』や『川崎市の道路整備プログラム』などでは、「高度経済成長」時代に作られた道路計画が今なお引き継がれているが、これでは少子高齢化や地球温暖化など、道路計画が作られた後に顕在化した問題に対応できるはずが無い。

例えば、最近延伸された都市計画道路宮内新横浜線では、自動車車線が広く取られ、違法駐車場と化している一方で、歩道は狭く、自転車レーンに至っては全く無い状況である。しかもこうした道路建設のために多くの住民を立ち退かせ、既成市街地を分断し、コミュニティを破壊している。人口密度の高い川崎市の貴重な土地を、このような無駄な町壊し道路に割くような計画は改めねばならない。

本計画の理念に『持続可能であること』が挙げられていることからも、30年、50年後の社会像を考えた計画にする必要がある。こと交通インフラは、今整備したものが50年後、100年後の市民生活に大きな影響を与えるものであるから尚更である。

一方で、少子高齢化が進み、さらに高度成長期に集中的に造られたインフラの疲労が進み、国全体のインフラ維持費に50年で400兆円を超えるといった試算も示されている(日本経済新聞 2012年 8月27日「老いる公共施設―公共施設は400兆円」)中で、しかも世界の先進国で自動車利用が減少傾向に入り、しかし既存道路の舗装や信号機など様々なインフラ維持に莫大な費用をかけていく必要がある中で、さらに道路を増やす本計画案は「持続可能」とは言い難いものである。

もし仮に必要な道路があるとしても、「持続可能であること」を基本理念に据えるのであれば、初期の建設費用だけでなく、その後の維持費負担も含めて「持続可能」な計画であるかを再評価することが必要であろう。

ついては、縦貫道路、都市計画道路などのうち、現時点で着工していない道路計画は一旦白紙化し、本計画の下位計画である『道路整備プログラム』は21世紀型の新しい社会課題に対応できるよう抜本的に見直す必要があることから、20世紀に計画されたまま未だに着工されていない事業は全て一旦白紙化し、「時のアセス」を導入するよう求める。

自動車公害の防止計画を規定すること

自動車は深刻な大気汚染や騒音等の公害発生源になっているにもかかわらず、本計画案では、交通分野において「地球環境」以外の環境問題に触れられていない。川崎市環境基本条例の基本的施策にも明示されている自動車公害の防止が、本計画において全く規定されていないのは極めて不適切である。

また、2009年に環境基準が策定され、自動車排気ガスが主な排出源である微小粒子状物質 PM2.5 について、観測体制を整備し、監視および排出削減する具体策を明示するよう求める。

電気自動車について、自家用車への助成を行わず、投資効率の高い車両に集中投資すること

重点施策「車両等の低炭素化」に関連して、電気自動車の導入への助成策が明示されているが、営業車に比べて平均走行距離の短い自家用乗用車がこの対象に含まれた場合、極めて投資効率が悪い上、こうした助成が入らない自転車や公共交通に比して自動車利用を優遇することになってしまい不適切なため、自家用乗用車はこの対象に含めないよう求める。

走行距離が短い自家用乗用車に安易に公金を投じるべきでなく、むしろ路線バスなどの公共車両はもちろん、電動アシスト自転車新聞や郵便の配達用電動オートバイ端末宅配用の軽貨物自動車、および緊急車両などに集中して助成を行うべきである。

さらに、2011年3月11日には東京電力の原子力発電所で甚大な事故が発生しており、これを受けて2012年8〜9月に実施された「国民的議論」では、少なくとも過半数の国民が速やかな原発依存ゼロを求めている事が明らかになった。自転車や公共交通などの他の交通手段に比べて極めてエネルギー効率の悪い自家用電気自動車に支援してその需要を煽ることになれば、電力需要を逼迫させ原発依存につながりかねず、国民の要請にも背きかねない施策である。

今後は省エネ目標を積み増しながら再生可能エネルギー中心の一次エネルギー構造に転換していく必要性が叫ばれている中で、自家用乗用車の仕組みを温存したまま、安易に「電気自動車」に切り替える施策を行うことは、エネルギー安全保障の観点からも極めて問題が大きく、全く持続可能な施策ではない

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鉄道・幹線公共交通について

鉄道の地下化・高架化一辺倒の計画を改めること

少子高齢化の進展に伴い、公共交通に対するニーズも変化しつつある。本計画案では、通過交通や内外交通に比べて内々交通の重要さが増していくと推計しているが、単に目的地が変わるだけではなく、交通手段に対する要望の変化も生じると考えられる。

たとえば、高津駅〜溝の口駅、武蔵小杉〜中原〜新城〜溝ノ口駅、のように、鉄道とバスが並行している区間で、若い世代には早くて安い電車が選ばれるが、高齢者を中心に、時間のかかるバスを選ぶ人が増えている。また、幸区〜川崎駅東口のように、階段やエレベータを使わずに直接市街地へ出られるバスを求める声も挙がっている。つまり、単に交通手段があればいいのではなく、地上で乗り降りできることが重視されている

こうした市民の要望に応えるために、鉄道の高架化・地下化ではなく、地上の公共交通を重視するよう求めたい。

具体例としては、鉄道駅ではいたずらにエレベータを増やすのではなく、対向式ホームの両側に改札口を付けることで、乗客の利便性が高まり、省力化にもつながる方法がある(近隣では、東急大井町線、多摩川線、池上線などで実施され、少ない費用で高い利便性を提供している)

道路においては、路線バスの利便向上はもとより、バス停に至るまでの道路構造も課題になる。歩道橋や押しボタン式歩行者信号を削減・撤廃し、歩車分離信号2011年 4月20日警察庁通達「歩車分離信号の整備促進について」を参照)を増やすといった具体策が必要である。

高齢化時代に「誰もが利用しやすい」「安全・安心かつ円滑」で「持続可能」な交通施設にするためには、省エネルギーで、人にもやさしい地上設備を残したまま、利用者が円滑に利用できる交通施設へと改修することにこそ投資すべきと考える。

路線バスの地域特性に応じた利便向上策を実施すること

川崎市においては、東京方面への公共交通アクセスが充実している一方、臨海部や宮前区内などを中心に、路線バスが準幹線交通を形成している地域がある。こうした地域において、路線バスの本数は比較的充実しているが、速達性、定時性、快適性などに課題が残る。

そこで、平日日中の運行本数が毎時平均12本以上の線区ではこの施策を行う、などと具体的な基準を示しながら、すでに導入されているPTPSの終日運用や路線拡大、幹線区間における連接バスの導入、拠点バス停付近における駐輪場の整備、定時性確保のためのバス専用レーンの確保や違法駐停車の徹底排除、といった施策を実施するよう求める。

また、施策「バス運行社会実験制度」などが盛り込まれているが、こうした取り組みの多様かを求めたい。例えばバス停への所要時間の明示、ダイヤの工夫、会社間で運賃を調整する制度化(共通一日乗車券の導入など)といった様々な施策が考えられるが、事業者間調整や先進事例調査などが必要になるものもあるので、市役所が取りまとめ役になり、こうした施策を推進するよう求めたい。

過度に自動車に偏っている道路上の空間配分を見直し、終日バス専用レーンやLRT、自転車レーン等の導入に向けた調査検討を始めること

以前の骨子案、および本計画案の説明会にて、会場より、臨海部の中量幹線交通を効果的に改善する案として、LRT (Light Rail Transit) を導入する提案が出されたが、本会でも、この提案を全面的に支持する。 特に、朝ラッシュ時は毎時100往復以上の路線バスが行き交う、川崎区の大動脈であり川崎市の顔でもある、市役所通り・富士見通りへの終日バス専用レーンの導入、およびBRT・LRTの導入検討を始めるよう提案したい。

そうした意見に対し、市役所からは「現時点で導入空間を想定できない」「道路空間を相当に食う」といった見解が示されたが、例えば川崎市役所前の市役所通り・富士見通りでは、自動車のために片側3車線も確保され、なけなしのバス優先レーンは違法駐車が常態化し、歩道は狭く、利用の多い自転車に至っては走行空間が満足に確保されていないという、極めて歪な配分になっている。

公共空間である道路において、自動車のための空間(車線数や幅)が既得権益のようになってはならず、「場所が無い」と言い訳をして全否定するのではなく、今は難しくても配分は随時見直しをすることが肝要である。 特に公共交通を重視する川崎市においては、幹線区間にLRTを導入することも含めた、20年先を見据えた幹線バス路線の機能強化策の検討を始めることを求める。

コミュニティ交通の導入支援を拡充すること

本計画ではコミュニティ交通の導入支援が掲げられており、引き続き取り組みが推進されるよう期待したい。特に、コミュニティ交通は地域により要望が多様であることから、多様な地域特性に対応できるよう柔軟な制度にすることを求めたい。

一方、コミュニティ交通は元々採算性が悪く民間事業者が参入できない地域で運行される場合が多く、一部住民の負担や事業者のリスク負担に過度に依存しては持続可能な仕組みが出来にくい面もあることから、市も責任主体のひとつとして役割を分担し、自ら頑張る地域にはより支援を手厚くするような仕組みの導入に期待したい。 たとえば、他市で実施されているように、年間一定程度の基準を設けて、その範囲で運営費を含めた補助をするといった制度の創設も考えられるだろう。

また、運行実験については他市の事例に習い、地域住民への周知や路線変更等の工夫を可能にするよう、1年以上など期間を長くするよう求めたい。

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市民が実感できる効果的な政策立案・実施のために

本計画の実施過程で、市民参加の機会を増やすこと

本計画案では、上位構想で定めるまちづくりの基本目標に「誰もがいきいきと心豊かに暮らせる持続可能な市民都市かわさき」を明記しており、これは市民が主役という意味にも取れる。また「市民の責務・役割」も規定されており、市民の主体的な取り組み等が求められている。

一方で川崎市は地形的・地勢的に多様であり、地域ごとに交通需要も多様であるが、本計画案を策定した検討委員会では3名の市民委員に熱心にご議論いただいたものの、3名で多様な地域特性を全て代表するのは難しく、また学識委員も含めて自転車活用政策に詳しい委員がいないなど、必ずしも充分な議論ができなかった部分もあったように見受けられる。

幅広い市民の声をなるべく反映させるためには、計画の策定段階から、交通、まちづくり、環境など各関連分野で活動している市民活動団体や、地域の事情を熟知した各区のまちづくり協議会などにも意見を求め、そうした市民活動団体の経験や現場感覚を、今後の施策運営に反映させるべきと考える。

また、本計画案ではPDCAサイクルを回し、3年毎のCheck(評価)、Action(改善)を行うとされているが、こうした計画の実施過程においても、まちづくり協議会や市民団体などの事情に詳しい市民参加の機会を設けるよう求めたい。前者については、7つの行政区毎に特色ある活動をされているので、全ての行政区の市民に、参加の機会を確保するよう求めたい。

市、事業者、警察、国・県・他市等との関係を明確化すること

本計画案には多数の施策が示されているが、鉄道、道路、路線バスなど多くの施策において、川崎市役所の単独の判断では実施できず、各関係機関との調整が必要な施策が並んでいる。しかし、具体的にどことの調整・協議が必要かについては、個別施策の詳細な文書を読み込まないと分からないようになっている。

そこで、本計画案で示された各事業について、責任・関係主体がどこであるかを示すために、市単独でできる事業、事業者や警察、他の自治体などとの調整が要る事業かを分かりやすく示すことを求めたい。こうすることで、今後の本計画の進捗管理においても有意義なものと考える。

主体的に取り組む市民と連携・協力や支援をするための仕組みをつくること

本計画案では「市民の責務・役割」が規定されており、交通事業者に対しては個別施策の中で協議や支援が行われるようだか、一般の市民については、主体的に取り組む市民を支援する具体策が見られない。

他の主体との連携・協力という言葉だけはあるが、具体的にはどのような形で連携や協力を模索するのか。または具体策はこれからという事ならば、いつどのように連携・協力体制をつくっていくのか。なるべく多くの市民の積極的な取り組みを引き出すためにも、行政側から先にどのような働きかけをしていくのか、明確に示しておいていただきたい。

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以上
持続可能な地域交通を考える会 (SLTc)  代表 井坂 洋士
 
〒211-0004 川崎市中原区新丸子東3-1100-12 かわさき市民活動センター ブース5
[URL] http://sltc.jp/  [E-mail] query@sltc.jp  [FAX] 020-4664-6084 [TEL] 050-3638-3464

※本意見書は当会ホームページでもご覧いただけます: http://sltc.jp/file/2013/20130304kawasaki_kousei.html

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