持続可能な地域交通を考える会 > 『クルマよ、お世話になりました』 |
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四六判・ソフトカバー・346頁
定価3132円(本体2900円)
ISBN 978-4-560-08326-0
2013年11月(10月下旬)刊
■■内容■■
米国はいかにして車大国になったのか。クリーンエア最優秀賞受賞者がその知られざる驚異の歴史を詳述し、クルマに依存しない豊かな生活のための方策を提案する快著。有益にして刺激的!
http://www.hakusuisha.co.jp/detail/index.php?pro_id=08326
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クルマ大国アメリカの知られざる暗黒史を詳述し、クルマに依存しない豊かな生活のための方策を提案する話題作。
著者はまず様々な歴史的事実やエピソードをとおして、アメリカのクルマ大国化を検証してゆく。そこには徹底した作為と詐術があった。鉄道に対しては複雑な規制を設けたり路面電車には自己資金による整備を強要する一方、道路建設に関しては連邦予算を使って着々と推進し、膨大な広告費を投じて他の交通機関を排斥してゆく。こうしたことを陰に陽に策したのが全米自動車協会や石油資本であった。現代の原発推進政策を見る思いがする。本書前半の闇のクルマ発達史だけでも一読に値するだろう。
環境悪化、人格の凶暴化、経済的負担などの弊害を具体的な数字を挙げて展開される第2部につづき、全7章から成る第3部の脱クルマの処方箋は、じつに包括的、詳細にわたり、著者の柔らかい発想には驚くばかりだ。また、クルマ好きの読者にはサスペンスのように読めるに違いない。
本書はその充実した内容と説得力あるビジョンにより、交通問題・環境問題に関わる市民ばかりでなく、ありうべき都市環境をめざす研究者にとっても、持続可能な住みやすい街づくりを推進するための格好の指南書となるだろう。
かつて東京五輪が決まった1960年代、私たちは多くの市民に支持されていた路面電車を剥がし「交通戦争」へと突き進んだ苦い歴史をもつ。2020年に向けてどうすべきなのか、本書は多くの示唆を与えてくれるだろう。
(白水社版チラシより)
クルマのせいで私には二つ顔がある。運転してないときなら、真面目に横断歩道を渡る優等生の自転車乗りか歩行者だ。ところがハンドルを握るやいなや、悪魔に駆られたごとく気性の荒い傲岸無比のドライバーに姿を変える。交差点でぐずぐずしているそこのベビーカー、轢き殺すわよ、と言わんばかりに。おまけに常に罪悪感につきまとわれる。乗っているトヨタ車のガソリンが一定量まで減ると、冗談でなく自動的にガソリンスタンドに足が向き、決まってなるべく多くの燃料を入れようとしてしまうのだ。クルマに乗ってばかりいたら、各方面でトラブルをまねくと分かっていながらだ。石油開発の最後のフロンティアでは土地を荒廃させ、生き物の絶滅を引き起こす。自宅周辺では隣人たちの静かな環境を台なしにする。クルマで夜遅く帰ると、必ず彼らの飼犬を吠えさせてしまうのである。
理想が何であれ、きちんと伝えるのは至難の業だ。あえて単純に言ってしまうなら、こういうことである。健康を取り戻し、コミュニティを再生させ、自然の多様性や環境といった命ある地球すべてを守りたいと願うなら、そうした真っ当な生き方の最も自明な一歩目が、クルマから降りることなのである。言うのは簡単。でも可能だろうか?
ケイティ・アルヴォードは、多くの人びとの経験からそれができると証明する。この場で、今まさに。クルマとの決別方法を知りたい人にとって幸いにも、その実践者である彼女は何年も歩き、自転車をこぎ、その他様々な方法でこの理想を追求してきた。今こうしてその理念が本書に結実した。本当に素晴らしいことだ。
本書は、このクルマ依存社会ですぐさまクルマ中毒を克服できると安請け合いはしていない。だが本書でクルマのための執拗なプロパガンダ攻勢や、様々な副作用の原因について学んだ読者なら、誰もがセダンやSUVから即座に飛び降りる手立てをもっと知りたくなるだろう。それについても本書は豊富な情報を提示する。
クルマや幹線道路が吐き出す物と、「自然」災害の増加や深刻化には関連があること。ワッツやニューアーク、デトロイトにおける反乱の契機になったのは、都市再開発と高速道路建設であること。アルヴォードはこれらを巧みに描き出す(「黒人のベッドルームを貫く白人の道路」[p81参照]など、まさに膝をうつ)。白日のもとにさらされたのは、クルマそのものと、後の偉大な20世紀の哀れむべきクルマ中毒の、文明的あるいは地球物理学的影響である。本書の分析は極めて興味深く読める上、驚く人もおられようが、技術は中立的だなどというのは、まったくの戯言であるのを実証してみせる。
本書が山となす証拠で指し示すのは、クルマ乱用が地球全体に及び、政治はそれに加担している現状だ。根拠がこれだけあれば、思い切った対策をとらない正当な理由など一つもあげられないし、人びとが一気にクルマ離れする可能性もあるように思える。しかし、クルマはインフラや文化において決定的役割を果たしており、極めて手強い。それがもたらすふんだんな駐車スペース付きショッピングモールの隆盛に示されるように、クルマは社会に深くくい込んでいるのだ。
以前、乗っていたクルマが正面衝突を起こしたことがある。双方の小型車乗員3名に、幸い死者は出なかった。だがその後数年、体調も生活も芳しくなかった。こうした生死にかかわる一大事を振り返ってみると、つくづく思う。240キロほどの遠出だったあの時、自転車で駅に行き、列車に乗っていたらどんなによかったことか。自転車は列車に載せ、自分たちは席に落ち着き、周りの旅行者とちょっとしたピクニック気分。おしゃべりしたり、うたた寝したりもしていただろう。
深刻な事故のような教訓的な機会はなくとも、大半の人は気づいてはいるのだ。主要な交通手段として自家用車に頼るのは、あらゆる人にとって破滅的な考え方だということに。デトロイトのクルマ富豪政治のお偉方とて、フロントガラスに投げ出されたら骨は折れるし血は流れる。私とアルヴォードは偶然にも双方ミシガン在住で、クルマがアメリカ産業主義の精髄であり、力の源泉であることも重々承知だ。その一方で、一世紀にわたって時間や人同士の温かなつながり、美しさを奪ってきた最有力容疑者であることも認めざるをえない。クルマがあることで魅力が増す場などどこにもない。だが長年の依存で、カーフリーの暮らしがどんなものか明確なイメージは持ちにくい。そんな大転換をもたらす根拠ある青写真を考案するとなると、できるだろうかと気持ちがたじろぐ。
それでもなお驚くべきことに、世界中で活動家たちが、我らが地域をクルマの支配から解き放つため、思考を鍛えネットワークを強化している。本書は、先頭をゆく彼らのとりくみを余すところなく紹介する。その活動は社会を、徒歩や自転車、バスなど公共交通利用に向かわせ、私たちがともに歩むべきは州間高速道路などではなく、そうした道だと背中を押してくれる――まだまだ少数派ではあるのだが。したがって、未来はクルマによって窒息させられ、私たちは惨めに悔しがる運命のみと決めつけるのは早計だ。アルヴォードの集めた事例は、クルマに対する対抗文化、この地球規模で力強く存在する文化を照らし出す。だから本書は、最後まで意気高く、説得力と実現性あるビジョンに満ちているのだ。
石油後の時代が訪れようとしている今、本書は私たちが従うべき道標でもある。原稿を読み進むうち、現状の欠陥や問題に、いても立ってもいられなかった。私の地元もそうだが、あらゆる地域の道路管理者、街づくり担当者すべてが本書を読むよう義務付けられ、その内容を心に刻んでくれたらどんなにいいだろう。それこそが、正しい足取りでこの1000年を出発する方法だ!
一世紀、それは歴史的な時間としては一瞬のきらめきに過ぎないが、社会はクルマと同禽してきた。今後の一世紀、人びとが突如として良識に目覚めれば、私たちとクルマとの質の悪いロマンスは過去のものとしてしまい込むことができる。後は教訓として役立てるのみだ。空気はよりきれいに、地方はより緑豊かに、私たちの身体はよりスリムになる。このような魅力あふれる結果に至る道筋で、舗装をはがした後の土地活用から雇用の場が生まれたり、自転車修理が成長産業となったりするだろう。列車通勤も再び当たり前のことになるかもしれない。一方、油まみれで死にかけた海の生きものをボランティア頼みで救援するなどという、ばかげた事態は減るだろう。
機知に富み充実した内容と一貫性を持った本書は、心に強く訴える力を持つ。その証拠に、読後の12月の朝、霧は濃く憂鬱で寒かったにもかかわらず、私は土曜の用事を自転車ですませた。完全な決別とはいかずとも、試しに少し離れてみることでも達成感を感じるものだ。踏み出すことに躊躇することはない。
一九九九年一二月 ミシガン州メイプルシティにて
ステファニー・ミルズ [アメリカの作家、教育者、バイオリージョナリスト]
フリーランスの著述家・市民活動家。北カリフォルニアに生まれる。カリフォルニア大学デービス校で生物学を専攻、その後、同大学バークレー校で図書館学・情報学の修士号を取得。30年近くにわたって交通・環境保全などの分野で活動し、「Auto-Free Times」「Buzzworm」「Car Busters」「The Urban Ecologist」「Wild Earth」などに寄稿する。1992年からはクルマとの《離婚》に踏みきった経緯を書く。こうした活動によりクリーンエア最優秀賞 (Clean Air Champion award) を受賞。また関連公教育活動でもしばしば表彰され、地域や下院議員のための交通・環境問題アドバイザリー委員も務める。1994年、ミシガン州アッパー半島に移住し、夫妻でカーライト生活を楽しんでいる。
★印は見本展示と販売、◆印は見本展示とチラシ配布を行う予定です。
なお、上記以外の不特定多数の方が集まるイベント会場等で見本展示等の場所をご提供いただける場合はご連絡ください。
自動車の利便は盛んに報じられる反面、様々な弊害については被害の深刻さの割りにほとんど顧みられないまま、自動車優遇政策が進められ続けています。
私たちは、自動車の利用がもたらす様々な弊害にも向き合い、安易な自動車利用を控え、徒歩、自転車、公共交通の利用を優先することで、人と環境にやさしい地域づくりに向けて取り組んでいる市民団体として、クルマの問題点とその解決策を整理した本の翻訳・発行に3年がかりで取り組んできました。今般、白水社様の協力を得て、単行本として全国の皆様の許にお届けできることになりました。皆様のご支援に感謝し、実際に翻訳に当たった担当者よりご報告いたします。ぜひご参加ください。
日 時 2013年12月 3日(火)18:30〜(開場18:15頃) 会 場 渋谷区勤労福祉会館 2階 第3洋室(会議室)
(2013.12.04)
昨日の報告会には多くの方にご参加いただき、ありがとうございました。
当日の配付資料(抜粋) (PDF 562KB) を掲載しました。
この他、『交通・環境・まちづくり おすすめ図書』はこちら (PDF 6.3MB) で、『自転車ルール教本』はこちらでご覧いただけます。
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