内閣官房(地球温暖化問題に関する懇談会事務局) 御中
「地球温暖化対策の中期目標に対する意見の募集」に関する意見書
2009年 5月16日
掲題の意見募集に際し、本会定例会および連絡網の中で検討を行った結果、取りまとめた意見を下記のとおり申し述べます。
我が国の温室効果ガスの中期目標(2020年)は、どの程度の排出量とすべきか
以下の6つの選択肢から選ぶか、独自にふさわしいと考える排出量(■■年比●●%)を挙げてください。また、その理由も述べてください。
1990年比 -30%
- IPCCなど科学的な見地からの要請に応えうる削減を行う必要がある。
- COP15で国際的合意を形成する時期であるが、「先進国」と位置づけられている私たちが低い目標を掲げては国際的な合意形成に寄与するどころか、むしろ国際的な努力を破壊しかねない。
- 石油枯渇後にも私たちの生活が持続可能にするためには、今のうちから化石燃料に頼らずとも快適な生活を実現する必要があり、今後は環境負荷の低い技術や製品、および日々の生活で環境負荷の低い選択をする人が評価される仕組みづくりを進めておく必要があるが、そのためにもきっちり高めの目標を掲げて真摯な取り組みをすることが必要である。
その中期目標の実現に向けて、どのような政策を実施すべきか
- 大都市圏は当然、地方都市においても、「マイカー」を使わなくても日々の生活が充足するよう、歩行環境の改善、自転車利用の推進とその環境整備、鉄軌道・バスなどの公共交通の充足とその利便性向上、都市計画における交通手段の環境配慮などの各種施策を整備し、推進する。
- 自動車購入時やその取扱説明書、運転台、給油時、広告宣伝などに、自動車の利用が人と環境に悪い影響を及ぼすことを明示することを義務化する。
- 地域内輸送において、徒歩・自転車など環境負荷の低い交通手段の利用をすすめる事業者が評価される仕組みを設ける。
- 都市間など中長距離輸送においては、自動車ではなく鉄道・船舶の利用が安値で便利になるよう政策誘導を行う。
- 日々の生活の中で自然と歩く、自転車や公共交通を使う選択をするよう促すために、モビリティ・マネジメントなどの環境教育を全ての世代・地域において実施する。
その他、2020年頃に向けた我が国の地球温暖化対策に関する意見
以下、本会で設けた議論の場で出た意見を簡単に取りまとめておきます。
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電子メールでしか意見を受け付けないことに批判が寄せられた。
意見募集に電子メールを使うのは良いのだが、他の手段(文書やFAXなど)による意見募集も併せて行うべきである。
また、本件の発表方法もホームページにPDFを置いただけという形であり、多くの国民に意見を寄せてほしいという姿勢が感じられない。
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国際的合意が得られないような「選択肢」が堂々と掲げられている。
特に「+4%」などという国際的に合意が得られるとは思えない「選択肢」が掲げられているが、仮にこの値を推す人が多かったとしても、政府は国際交渉の場でこの値を堂々と宣言し、国際交渉に臨むことができるのだろうか?これで合意を取り付けることができるのだろうか?
このような現実にあり得ない「選択肢」を掲げることは、国民を欺き愚弄するものではないか。
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京都議定書の約束の履行にもいまだに目処を立てられない中、今度はこんな値を平然と主張したとき、日本国は国際的な役割と責任を引き受けないというメッセージを発信することになる。このような「選択肢」をあえて掲げるのであれば、そのような国際交渉に臨む方からの説明も併記すべきである。
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「選択肢」を示す際に使ったモデルの前提条件が恣意的であり、しかもその前提条件を決める際に特定産業の意見は入れるが私たち一般国民の意見は考慮もされない。その前提条件が「選択肢」の結論をほぼ決めているような状況であり、ミスリードである。
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掲げられた「選択肢」が異様で、それを決める過程も自動車・鉄鋼・電力など特定産業の意見が偏重されるような場において検討されており、出てきた結論も一般の国民に分かりにくい形である。そもそもの前提条件もおかしいこの意見募集はやり直し、白紙に戻して検討しなおすべきである。
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たとえば欧州などでは合意形成に時間をかけており、それこそ委員は全国を回って一般の国民と意見を突き合わせるなど、国民ひとりひとりが時間をかけて議論し、そうした意見を採り入れる仕組みを備えている。
ところが、日本の検討会は酷いものである。たとえば「選択肢」の前提条件になっている各モデル算定前の基礎条件が開示されていないなど、一般の国民への情報開示が極めて悪い。出てきた結論も、一般の国民が見ても解らないような形で突然出てきて、しかも一ヶ月で意見を出せと言うなど、国民不在の議論になっている。
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このような机上の空論を平然と出してくるような委員は総入れ替えし、一般の国民が議論に参加できるよう一からやり直すべきである。
以 上
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上記は、本会の総会・5月定例会で意見交換した結果を取りまとめて文書化し、提出したものです。
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内閣官房所定の様式(装飾無しのテキストファイル)にて提出した本文をそのままに、装飾情報を追加して掲載しています。
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上記以外にも、会員個人の意見を各自任意で提出している場合がございます。
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本声明はホームページでも公開しています:
http://sltc.jp/file/2009/20090516ondanka.html