第3期川崎市自転車活用推進計画(案)」に関する意見

2026年01月05日提出
持続可能な地域交通を考える会 (SLTc)
代表 井坂 洋士
 
〒211-0004 川崎市中原区新丸子東3-1100-12
かわさき市民活動センター レターケース5
 

自転車は市民の生活に欠かせない交通手段としてはもちろん、市民の健康増進、交流や観光の促進、さらには自動車を削減することによる危険や公害の抑制、気候変動対策や省エネによるエネルギー安全保障にもつながるなど、自転車の利活用は時宜を得た非常に重要な施策であり、そこに正面から取り組む本施策は大変有意義なものと受け止めています。

一方で、本計画の具体策には従来施策の延長的な規制・対策的施策が大勢を占め、自転車活用推進法が求める本来の自転車の利活用という観点からは不十分な点も見受けられましたので、下記の施策を加えていただくことで、さらに施策が充実するよう期待しております。

本来の交通ルールにそぐわない啓発サインの見直し

法定外標示のうち、自転車の通行する場所や方向を想起させる矢羽根などとは別個に、川崎市内ではシールや垂れ幕などによる、単路上の「自転車とまれ」、車道における「自転車は徐行」といった表示が盛んに行われている。

このうち矢羽根などの交通ルールに沿った施策は引き続き整備してほしいと思うのだが、後者のシールや垂れ幕等による表示が、ときに本来の交通ルールと合致しない形で濫用されているのはいただけない。

ルール指導に携わる現場でも、一時停止や徐行などの本来の交通ルールを教示する傍らで、川崎市と警察署の連名による不適切な法定外表示が各所に設けられており、自転車利用者を混乱させている、あるいは本来のルールに則った重要な標示が埋もれて霞んでしまう傾向がうかがえる。

単路(車道)上にいたずらに「とまれ」や「自転車は徐行」を貼ることや、交差点においても本来「とまれ」の交通規制がない側にも「自転車とまれ」のシールを貼ることは不適切にあたる。

本来逆走にあたる車道右側に「自転車とまれ」のシールを貼るのも不適切にあたる。

こうした守られない法定外表示を濫用することは、指導する立場にある市役所や警察が本来の交通ルールを軽視している証左とも受け止められかねない。

ついては、「とまれ」「自転車は徐行」といった本来の交通ルールと合致しない表示は見直し、例えば「自転車は徐行」は削除して「歩行者優先」のみにする、「自転車は」ではなく「(自動車を含む)車両は」に改めるなど、本来の交通ルールに沿った表示に改めるよう求める。

自転車の走行に危害を及ぼしかねない危険なハンプの撤去

従前の本計画に沿って多摩川サイクリングコースに設置されたハンプが、スポーツサイクルのパンクやスポーク破損といった故障につながっているとの指摘が挙がっている。

このハンプは軽快車(いわゆるママチャリタイプ)にはさほど負荷にならないようだが、自転車にも様々な車種があり、通勤や健康増進等で活用されているスポーツサイクルと呼ばれる車種には負担が大きい構造になっている。

また、このハンプが設置された場所は交差側に「止まれ」の標示があり、本来は交差する自動車等の側に一時停止の義務がある。

こうした危険で不適切なハンプは即座に撤去するとともに、仮に今後ハンプ等を設置する場合にはスポーツサイクル等の車種にも悪影響を及ぼさない構造にするよう求める。

不適切な交通規制等の見直しと自動車の違法駐車対策

神奈川県警察管内にはクルマ目線で交通規制が実施されている箇所が多く見受けられるが、これが自転車の利用促進を妨げている。市役所は管轄外と言わず、自転車利用促進の観点に立って、警察に働きかけてルールの改定を促す役割を果たすよう求める。

一方通行には原則として「軽車両を除く」「自転車を除く」を実施するよう求める。

国道466号(第三京浜)の下などに設置されている押しボタン式信号機には、クルマ優先思想で、歩行者や自転車利用者が押した後で数分も待たされるような信号機が存在している。こうした押しボタンは原則として撤去する、または押したらすぐに現示が変わるようにするなど、クルマ優先ではなく歩行者と自転車利用者が優先される交通整理に改めるよう求める。

交差点では本来自転車の信号待ち場所を確保する必要があるが、現状は左折レーンや左折信号が設置されていて自転車が信号待ちできない箇所が散見される。こうした交差点では左折現示をやめる、路面標示等により自転車の存在をアピールする等、自転車が交通ルールを守れるように整備する責務が警察と道路管理者にあると考える。

そして自転車は車道左寄りを走るものだが、そこに自動車の違法駐車が蔓延していることも、自転車利用者の危険や時間損失につながっている。川崎市においては自転車は「放置自転車」と称して市役所がせっせと撤去しているところだが、「放置自動車」は市役所も県警も放置していて、対策が機能していない(から蔓延している)。本来自転車が走る場所である車道左側の安全を確保する責務も警察と道路管理者にあると考える。

とりわけ違法駐車が蔓延している駅前、商店街や商業施設付近等においては、自転車に行っている対策と同様に自動車の違法駐車は即レッカー等の取り締まり強化に加え、商店街等においては日中時間帯の自動車進入禁止等の追加規制も要望してゆくべきだろう。

旧式駐輪場の改修と台数確保

川崎市内では鉄道駅および主要商店街に駐輪場が整備されるようになり、それ自体は良いのだが、買い物カゴなどの設置を考慮しない狭いラックが多数採用されていて、適切な駐輪の妨げになっている箇所が散見される。

とりわけ近頃は安全規制の見直しもあり、子ども乗せ自転車を中心に大型化しているし、2段式は下段に後カゴ付き自転車が入ると上段を出せなくなる、転倒等の事故につながる、そもそも高齢等で狭いラックの自転車は出し入れが困難といった事例も見受けられる。

本計画でも触れられているが、こうした駐輪場はラックの幅を広くする、2段式をやめる等の改修を進めていただきたい。

また、市バスの営業所に駐輪場やシェアサイクルを設置する、大規模小売店舗立地法に該当する商業施設等や集合住宅に使いやすい駐輪場の設置を求めるなど、市役所の関連部局や不動産開発を行う事業者にも自転車駐輪場やシェアサイクルの設置・拡大を求めていただきたい。

シェアサイクルの推進

川崎市が所管する公園等の公共施設にはシェアサイクルの設置が進んでおり、事業者からも川崎市内ではシェアサイクルの利用が盛んであると聞いている。川崎市の施策により公園や河川敷等公共施設への設置が進んだ結果として評価できるが、一方でシェアサイクル用のラックが少数しか設置されておらず、使いたいけれど借りられない/返却できないといった声も聞こえてくる。利用が多い施設を中心に、ラック数を増やす取り組みもしていただきたい。

また、未設置の市営駐輪場などもあることから引き続き設置を進めるとともに、県立公園やスーパーマーケット、鉄道駅や市バスの車庫・折返場、主要バス停付近、集合住宅の公開空地などへの設置(自動車駐車場からの転換)を促す取り組みもしていただきたい。

川崎区臨海部や黒川、岡上、久末等の交通不便や観光需要がある地域にも設置し、交通不便の緩和や回遊性向上による健康増進、観光需要喚起にもつなげていただきたい。

そして、シェアサイクル事業者から利用頻度・OD等の情報提供を受けて、今後の自転車活用施策に活かす取り組みもしていただきたい。

本来の自転車活用推進を

本計画では従来の規制の延長のような施策が大半を占めていて、本来の自転車活用推進の観点が足りていないように見受けられる。

例えばパーソントリップ(PT)調査により2008年→2018年の自転車のトリップ数(シェアではない)が10%減少しているとし、その理由を通販や電気通信の普及に求めているが、一方でクルマ目線の「道路整備」による自転車走行空間のミッシングリンクや、自動車の速度が上がる(≒危険が高まる)ことに対する自転車利用者の不安、目的地付近の手狭な駐輪場やその混雑による機会逸失、などもあるだろう。理由を外に求めて足元の問題を見失い、施策の手を抜くようなことがあってはいけない。

他の自治体では主要なバス停に駐輪場を設置する、生活道路において中央線を消して自動車の速度を抑制させるといった取り組みも為されているところだが、本市においてはそうした取り組みが足りていないこともあるのではなかろうか。

自転車利用の減少は、市民の外出機会を減らし、生活の不便に加えて、運動不足や交流の減少にも直結する。結果としてトリップ数が減っているからいいよね、で終わるのではなく、仮にそうであっても多くの市民にクルマではなく自転車を選んでもらえるよう、自転車の利用機会を増やす施策こそが本計画に求められているのではなかろうか。

自転車活用推進法の基本理念(第2条)にも定められているように、本来は自転車による交通が、二酸化炭素、粒子状物質等の環境に深刻な影響を及ぼすおそれのある物質を排出しないものであること、騒音及び振動を発生しないものであること、災害時において機動的であること等の特性を有し、公共の利益の増進に資するものであるという基本的認識の下に行われなければならない。

そして自転車の活用の推進は、自転車の利用を増進し、交通における自動車への依存の程度を低減することが、国民の健康の増進及び交通の混雑の緩和による経済的社会的効果を及ぼす等公共の利益の増進に資するものであるという基本的認識の下に行われなければならない。

本計画の成果指標には全体的な自転車活用推進を測る計画目標が盛り込まれていないが、2028年実施予定のPT調査やその先を見据え、交通手段分担率に占める自転車のシェア(割合)を高める、あるいは自動車のシェアを下げるといった数値目標を定め、自転車活用推進法の基本理念に沿った自動車を減らして自転車を増やすための施策を積極的に実施するよう求める。

以上

ご案内

本意見書は、本会Webサイトにも掲載しています。
http://sltc.jp/file/2026/01/20260105kawasaki_bicycle.html


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