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  川崎市建設緑政局自転車対策室 御中  

「川崎駅東口周辺地区総合自転車対策基本計画(案)」への意見書

持続可能な地域交通を考える会
代表  井坂 洋士 
2010年 6月18日  

私たちは、毎日の生活に欠かせない地域交通について、歩く、または自転車やバス・電車といった交通手段を安全・快適・便利にすることで、私たちの住むまちを人と環境にやさしいまちにしたいと取り組んでおります。

この度公開され意見募集されている「川崎駅東口周辺地区総合自転車対策基本計画(案)」について当会で検討した結果、下記のとおりご意見を申し上げます。

市民の交通手段選択に応える計画に改めること

川崎市内では、鉄道に加え自転車や路線バスといった人と環境にやさしい交通手段が比較的よく利用されており※1、安全・安心・快適なまちづくり、人と環境にやさしい低炭素まちづくりといった社会の要請に適う選択を市民が率先して行っている好ましい状況にある。

一方で、市の都市計画を見ると自動車走行空間の拡充策は枚挙に暇が無いほど挙がっている半面、自転車や路線バスの利用者が安全・快適になるような政策はほとんど行われていないのが実情である。道路という公共空間の配分の仕方を見ても、新川通り・市役所通りともに車道片側3車線に対し、自動車以外はすべて歩道に押し込められており、クルマが悠然と走り違法駐車が横行する一方で、歩道上では多くの歩行者と自転車やバス停、郵便ポスト、植栽、ごみ集積場、宝くじ売場、地下街入口などが入り乱れている。

その中で「安全で快適な歩行者と自転車の通行環境の構築」を基本方針に掲げた本計画は期待されるものであるが、その内容は後述するように、むしろ左記の方針に逆行するおそれのあるものが見られる。

川崎市におかれては、人と環境にやさしい交通手段を選択する市民を応援し、歩行者・自転車や路線バスの利用者を安全・快適にするために、本意見書の指摘を考慮した計画に改めることで、人と環境にやさしい交通手段を選択する市民を応援し、増やしてゆくことに資する計画を立案・実施するよう求める。

車道を含めた整備再編計画に改めること

本計画の基本方針では「自動車中心の道路構造から歩行者・自転車のための道路空間構築に向けた取り組みの推進」をすると掲げられており、この基本方針は徒歩・自転車・路線バスが多く選択されている私たち市民の要請に適うものであるとともに、来るべき低炭素社会に向けたまちづくりに欠かせない時宜を得たものであり、歓迎される。

市役所通り。車道が広く片側3車線あり、
うち1車線は違法駐車が常態化している。

ところが、本計画の具体策「11の施策の方向性」を見ると、歩道のみの再編に留めており(概要版基本方針1-1「市役所・新川通りにおける歩行者・自転車通行環境の整備」)、つまり車道には全く手をつけず、やもすれば問題を「歩行者と自転車の通行環境」に矮小化しているようにも見受けられる。実際に市役所通り・富士見通りと新川通りの現状を見ると、車道がゆったり片側3車線取られる一方で、歩行者が多い割りに歩道は狭く混雑が常態化し、さらに自転車が本来走るべき車道には違法駐車が常態化しており、自転車はまともに走れる場所すら無い実情があるが、こうした実情を根本から変えないことには「自動車中心の道路構造から歩行者・自転車のための道路空間構築に向けた取り組み」は成し得ない。

また、同じく幹線輸送を担っている路線バスについても、本来の優先レーンに違法駐停車が後を絶たず、車線変更を繰り返すことで運行速度が落ちているといった問題も見受けられる。

こうした問題に取り組むことなく、歩道のみ小手先の変更に矮小化した計画では問題解決は不可能であり、まずは本計画を片側3車線もある車道を含めた再編計画に改めることが必要であると考える。

まずは歩行者の安全を確保し、自転車は車道上に専用レーンを確保すること

東京都千代田区・麹町大通りの事例

「安全で快適な歩行者と自転車の通行環境の構築」を目的とした本計画であるが、ただでさえ歩行者が多い割りに手狭な歩道を、さらに分割して自転車通行帯を設ける計画になっている。この場合、歩行者は自転車通行帯も歩く(右写真)し、さらには自転車通行帯に植栽や郵便ポスト、バス停、電柱や電線地上機器類などが配置されるなど、自転車がまともに走れる状況にはならない。これでは歩行者・自転車が錯綜して危険な現状と何ら変わらず、本計画はまるで意味を為さない。

加えて、東京都心部などに比べて川崎駅前は自転車利用者がとても多く※2、多くの自転車を歩道に誘導すれば歩行者にとっては危険を一層増大させ、自転車利用者にとっては接触の危険を増大させるとともに快適性を損ない、歩行者・自転車利用者ともに不幸にするものである。 しかも、今後は高齢化社会の到来が予想される中、歩道の段差解消やベンチの設置、車椅子対応などが喫緊の課題である。川崎駅東口地区では今でさえ歩道は手狭であるから、歩行空間を拡げこそすれ、狭めるようなことはあり得ないだろう。

歩行者の安全・安心を第一に考えるのなら、まずは歩道上に自転車等の車両を走らせてはならないのであり、交通量の多い場所では歩車分離を前提にした検討を行う必要がある。しかも自転車利用者がかように多い川崎駅前においては、充分な幅員のある自転車専用レーンを車道上に確保することが、市民の交通手段選択の実態にも適うものである。

路線バスの走行車線を確保すること

川崎区に住み公共交通を利用する市民のほとんどが、区外との移動には川崎駅(JR・京急川崎駅を含む)を通っていると考えられるが、川崎駅から区内(塩浜・浜川崎方面)へは京急大師線(日平均往復で6.8万人が利用)と並んで路線バスが幹線輸送を担っており、路線バスは毎日片道3万人※3もの人々に利用されており、特に平日朝夕は車内が大変混雑する。

富士見通り。バス優先(朝夕のみ専用)レーンは
違法駐車で埋まり、機能を為していない。

市役所通り(富士見通り)を走る路線バスだけでも平日日中で片道毎時40本前後、平日朝7時台では同80本を超える(急行を含む。臨時、競輪・競馬場送迎、川崎病院線、アクアライン線は含まない)。この大半が市役所通りか新川通りを走り、さらに自転車は毎日1万台近くが走っていると考えられ※2、自転車と路線バスがうまく役割分担をして日々の交通を充足させている様子がうかがえる。

このような現状を踏まえた上で本計画を見ると、基本方針2に「自転車需要をマネジメントするという発想にたった公共交通機関への転換」と謳われているが、これは現状をあまりに無視した机上の空論と言わざるを得ない。たとえば「サイクル&バスライド」とあるが、あなたは混雑する上に料金がかかり時間も遅い現在の路線バスを好んで利用するだろうか?計画する側には、常に利用者の立場に立った計画立案をしていただきたい。

11の施策6「交通体系を考慮したバス交通の利用促進」に書かれているようなバス利用促進策を実施するのであれば、まずは路線バスの定時性・速達性・快適性を上げるために、バス優先レーンの専用レーン化、違法駐停車車両の徹底排除、全時間帯におけるPTPS(公共車両優先信号システム)の導入、幹線区間のBRT(Bus Rapid Transit:バス高速交通)といった方策が必要であり、「サイクル&バスライド」などはその後の課題であると、優先順位を付けて実施する必要があろう。

また、本計画では自転車以前に公共交通への転換を進めねばならない自家用乗用車の問題には微塵も触れられていないが、先ずもって自家用乗用車を減らすための計画を立案・実施する必要があろう。

自動車利用の在り方も含めた、総合的な交通計画に改めること

歩く人が隅に押し込められ、クルマが悠々と走るまちが、「魅力あるまち」に見えるだろうか?

「わが国最初の自転車専用道路」
日本自転車連盟・編「自転車運動綱要」(目黒書店、
昭和13年、自転車文化センター資料より引用)。

20世紀のうちは、そうした考えが主流であったかもしれないが、そうしたクルマ優先の考えでは諸問題を解決するどころか悪化させる一方であり、夢物語に過ぎないことが、過去50年の経験から明らかになった。

いち早く夢から醒めた欧州はもとより、今では典型的な「クルマ社会」の米国ですら、都市部には自家用車ではなく公共交通や自転車の利用を優先する様々な施策が取られている。 また、実際にそうした施策が取られた街では、歩きやすい賑わうまちが現出し、最近では米国でも「歩いて暮らせるまち」の不動産価格が上昇しているという。公共交通を中心に自転車利用も盛んな川崎市のような地域交通手段の分担比は、欧米諸国の都市の目標にすらなっているのである。

このように「人と環境にやさしいまちづくり」を考えるときは、まずもって自家用車は都心部に侵入させず、徒歩、自転車や公共交通の利用により安全かつ快適に移動できるまちづくりを行うことが主流であり、具体的な成果を挙げている。 これは外国の話ではなく、すでに自転車や路線バスが多く利用されている川崎市でこそ、市民の安全・快適のためにも必要な取り組みだろう。

一方で「交通ルールの周知」についても、対自転車に矮小化するのではなく、違法駐停車の徹底排除や速度超過の取り締まり強化といった取り組みに加え、荷物配達については短時間荷さばき所を設けるといった総体的な取り組みが必要であろう。

コミュニティサイクルについて

「11の施策の方向性」7「コミュニティサイクル等の導入に向けた取り組み」とあるが、コミュニティサイクルは都心部のように来街者が多い地域で、公共交通を補完する交通手段として活用が期待される。

ただし、走行空間の拡充が欠かせない。たとえば「ヴェリブ」を導入したパリ市では、自転車レーンを2007年までに371km整備し、今も拡充を続けている。国内で初めて都市型コミュニティサイクルを本格導入した富山市でも同様に自転車レーンが整備され始めている。 商業・官公署が集積する川崎駅東口地区でコミュニティサイクルは需要があると期待される一方、本計画にある自歩道のような貧弱な自転車走行空間しかない所にコミュニティサイクルを導入すれば、街中が一層混乱しかねないと懸念される。

また、コミュニティサイクルは制度設計とその運用を慎重に行うこと、予め公共交通手段や走行空間などを整備した上で導入することが必要と指摘される※4。決して駐輪場需要抑制の代替策ではなく、左記のような事例を理解した上で本計画に盛り込まれたのであれば歓迎したい。

施策に順番を付けること

概要版3ページ以降の「11の施策の方向性」を見ると、様々な施策があり、各施策の問題点については上記の通りだが、各施策の間に順番が付けられていないことも問題であると考える。

たとえば、バス利用促進のためには路線バスの速達性・快適性向上が欠かせないし、そのためにはバス専用レーンの確保や違法駐停車車両の排除が欠かせないが、そうした優先順位が全く示されないままに併記されている計画では、計画そのものの実効性も疑わしく見えてしまう。

各施策の問題点を問題点を改めることに加え、各々の施策の関係を整理し、順番を付ける必要があろう。

私たちの提案〜人と環境にやさしいまちづくりを実現するために〜

2009年11月に行われた新川通りでの社会実験の様子。

当会では日頃より歩く、自転車やバス・電車に乗って市内で生活する市民が中心となり、昨年11月の「歩行者・自転車の安全な通行環境の社会実験」現場を視察するなど、川崎駅東口地区の現状とその改善策について独自に検討を重ねてきた。

そうした状況把握をした上で上記のとおり問題点を指摘したが、さらに具体的な代替案として、市役所通り(富士見通り)・新川通りを、歩行者および自転車・路線バス利用者を中心とし、貨物輸送にも配慮した、人と環境にやさい道路空間を構築するための具体案をもって、本意見書との結論としたい。

川崎駅東口地区の現状分析

●駅前商店街・官公署が集中し、歩行者が多い。 ●通勤通学・買い物ともに自転車利用者が多い。 ●自転車での買物客、銀行等の利用者も多い。 ●買物客等が利用できる短時間自転車駐輪場が極めて少ない。 ●路線バスが多い。 ●路線バスは川崎駅発着の乗客が多く、途中各停留所での乗降客数は多くない。 ●貨物車の荷さばき場が無い。 ●車道左車線に違法駐車が横行。 ●乗用車は少ない。 ●中心市街地にもかかわらず車道面積が広すぎる。 ●中心市街地の真ん中で50km/hで走る必要はあるのか?無いだろう。

川崎市の地域交通に対する私たちの認識

必要な対策

●歩行者の安全・快適性確保が最優先 ●中距離幹線輸送を担っている自転車・路線バスの安全・速達性向上 ●短時間駐輪場の確保(通勤・通学と買い物客用の駐輪場の役割分担) ●バスレーンの機能確保(違法駐停車車両の徹底排除) ●共同短時間荷さばき場の設置 ●乗用車を中心市街地に入れないための施策

社会的要請

●交通の要衝であり、商業とともに市役所・市議会なども立地し、川崎市の顔である ⇒人と環境にやさしく市民の要請に応えたまちづくりをしているかの見本になる

私たちの提案 〜人と環境にやさしく安全・快適な川崎駅東口駅前へ〜


以 上  

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