上図のとおり、2通りの自転車通行帯が設けられた。ひとつは車道の外側1車線を仮に区切って車道に自転車専用レーンを確保するもの(上図左側)。もうひとつは歩道を区切って車道側を自転車優先にするもの(上図右側)。
川崎駅から臨海部へ向けて通る2本の大通りのうち、■新川通り(浜川崎方面)では前者が、■市役所通り(富士見通り、塩浜方面)では後者が行われた。
川崎駅東口駅前広場付近の歩道は「自転車通行可」になっていないが、実態として歩道を走ってしまう自転車があることから、この区域内の「自転車通行可」でない歩道では自転車を降り押し歩くよう呼びかけが行われた。
この2つの大通りは、川崎区内や横浜市鶴見区などから川崎駅に至る多くのバス路線が走り、京急大師線(日平均6.8万人が利用)と並んで川崎区の公共交通の幹線になっている。 このうち市役所通りを走る路線バスだけでも平日日中でも片道毎時40本前後、平日朝7時台では同80本を超える(急行を含む。臨時、競輪・競馬場送迎、アクアライン線は含まない)。
そこで片側1車線ずつがバス専用・優先レーンになっているが、実際にはあまり遵守されていないばかりか、違法駐停車が横行している。 このように普段は機能していないバス専用・優先レーンの機能確保を図る目的で、「バス専用・優先レーン内の違法駐車を抑制するために、誘導員による呼びかけを実施」されることとなっていた。
なお、川崎区内を走るバス路線はほとんどが川崎駅東口を起終点にしており、この一般路線バスは、情報が開示されている市バス(市役所通り側)だけでも概算で3万人(平日・休日を合わせた日平均、往復)が利用している※。
なお、新川通り側を中心に路線を持つ臨港バスは市バスより運行頻度が高いので(後述)、両社を合わせると路線バスだけでこの倍以上の人が利用しているものと考えられる。また自転車等の利用者が概算で1万人ほど(平日・片道)おり、その多くが2つの大通りを通っているものと考えられる。
川崎駅方面(北行き)は、右写真のように多くの人が次々と快走してゆく。社会実験も後半とあってか浸透具合は高いようで、自転車レーンが始まる新川橋交差点までは歩道を通ってきた自転車が、この交差点を過ぎると次々と自転車レーンに向かってゆく。
浜川崎方面(南行き)では、朝はむしろ歩道を通る自転車が目立った。
平日昼は、自転車レーンの利用が毎分数台程度見られたが、やはり歩道を通る方が多いくらいの感覚だった。休日も然りだが、近隣の商店や、歩道上の駐輪場を利用する人、また逆方面に行くために歩道を通る自転車もあったようだ。
なお、この自転車レーンは一方通行だが、平日には逆走は見られなかったものの、休日には逆走が数回見られた。 整理員に聞いたところ、平日の方が(自転車レーンの利用とそのルールが)浸透している、逆走は時々あるが対応しきれないのが実情だ、とのことだ。
右写真の新川橋あたりでは歩道に人が多くないものの、駅に近づくほど人が増える。歩道を歩く人の安全確保はもとより、自転車利用者の利便確保のためにも車道上の自転車レーンは有意義だろう。
ただし、右写真のようなバスベイでは、バスが来ると整理員が自転車レーンを塞いで歩道に誘導していたため、その間に歩道にあがり、そのまま歩道を走ってゆく自転車も少なくなかった。自転車は本来車道を走るものであり、歩道を通る場合は徐行だ。整理員が車道を塞いで歩道に誘導するという案内の仕方には疑問が残るが、後述のような課題もありそうだ。
なお、自転車レーンはカラーコーンで仕切られていたため、さすがに自転車レーン内の違法駐車は無かったが、カラーコーンに沿って車道側に違法駐車が並ぶ、タクシーが植え込みに突っ込んで交差点に駐車するなどの悪態が見られ、しかも取り締まられていなかった。こうした違法行為は平日朝よりも休日に目立ち、内訳は自家用車が最も多く、次にタクシー。貨物車は見られたもののあまり目立たなかった。
自転車とバスとの交差については工夫が要りそうだ。
欧州では自転車と路線バスが同じ車線を併用する専用・優先車線の運用事例が豊富で、日本でも多くの道路でこの方法が有効だと思われるものの、ここ「新川橋」を通るバスは平日朝7時台に片道90本、さらに駅寄りの「さいか屋前」では同105本にもなる。自転車もバスも連なって走っているような状況(右写真)で、これだけ多くのバスと自転車の平面交差はやはり危険だし、多くの利用者に速達性を提供する観点からも、自転車と路線バスは別々の専用車線を取ることが有意義だろう。
そもそも、この通りは既に車道が片側3車線確保されており、マイカーがスムースに流れるにもかかわらず、歩行者・自転車と路線バスが狭い場所で干渉し合っているという様相で、不釣り合いだ。駅前繁華街であることも相まって、道路という公共空間をどう配分すべきか、考え直す機会としてほしい。
ちなみに、駅方面に向かう自転車レーン終点はやはりバス停のすぐ手前になっていたが、ここでも警備員が常駐し、バスが来ると車道を塞いで自転車を歩道に誘導していた(右写真)。この先はすぐ「押し歩きエリア」に入るので、車道を走る選択肢を残しておかないと、自転車は実質通行禁止となってしまう。止むを得ない措置として行ったのかもしれないが、本来自転車は車道を走るものという意識が無いように映る。
中心市街地で多くの人が行き交う大通りを塞ぐ乗用車の違法駐停車は徹底的に取り締まられるべきだが、実態としては野放しになっているようだ。すぐ近くの交番は(目の前で社会実験中だというのに)空になっており、見回りもされていない。自動車利用者の違法行為とそれを実質黙認している警察の怠慢をどう改善するかが課題のひとつだろう。
一方、沿道は商店街になっており、小口配送車も多いが、付近に荷捌き場などが無く、実態として違法駐車が黙認されている状況にある。共同の荷捌き場などを確保する必要がありそうだ。
新川通りの駅寄りに行くと、歩道上に駐輪場が設けられている。整理員がおり随時整理されているのだが、川崎駅前は深刻な駐輪場不足の状況にあり(後述)、また歩行者の多い駅前繁華街で歩道の確保は必要だろう。
たとえば川崎駅東口駅前広場下の地下街アゼリアのさらに下にある市営駐車場を駐輪場に転用するなど、工夫が要るのではなかろうか。
川崎駅東口周辺の自転車等駐輪場と「放置禁止区域」は下図のとおり。
このうち大きな駐輪場は京急高架下(市役所通り側、新川通り側)とルフロン裏(JR東日本系列を含む)で、しかし不足しているため、市役所通り、新川通りなどの歩道上にも駐輪場が取られている状況。
川崎区内の「放置禁止区域」全体で見ると、自転車等(原付を含む、以下同じ)の利用台数 14,549 に対し駐輪場収容能力は 10,570 (62%)、その駐輪場の稼働率は 105% で、足りない駐輪場が収容能力を超えて使われている状況にある。