川崎市におかれましては、日頃より環境対策に熱心にお取り組みいただき、ありがとうございます。 この度は、掲題の意見募集を受けて本会定例会で検討を行い、取りまとめた意見・提案を下記のとおり申し上げます。
なお、[条例案]は本条例案に関する考えを、[具体案]はその後の具体策検討に際しご考慮いただきたい考えを示します。
たとえば、こんなスローガンを掲げてみてはいかがでしょう。
市長は「CCかわさき環境ミーティング」の席で、市民側の交通環境対策としてマイカーを減らし公共交通の利用をすすめることが一番重要だと指摘されました。まさにその通りだと同感しますが、具体案を見ると、「電気自動車」などが事細かに規定されているのに対し、肝心の公共交通利用促進策には何も具体的なものが無く、これでは不安です。
交通は出発地を出てから目的地に着くまでを総合的に考える必要があり、環境にやさしい様々な交通手段の連携が必要です。「公共交通機関の利用しやすい環境の整備」と言うだけでは足りず、マイカーではなく歩く、自転車や公共交通機関を利用する市民がより安全で快適なまちにすることが必要と考えます。
また、市ではきっと調査もされていると思いますが、住まいに川崎市を選ぶ理由に、交通の便利を挙げる人はかなり多いのではないでしょうか。公共交通は一見地味かもしれませんが、川崎市を選ぶ大きな動機になります。案文に「川崎市の特徴を踏まえる」という項目がありましたが、この特徴を前向きに活かさない手はありません。
そこで、たとえば「市は、総合計画や、まちづくり・都市計画の策定・見直しを行う際、歩行者、自転車や電車・バスを利用する人の利便増進を最大限考慮せねばならない」という一文を加えるだけでも、今後の具体策が変わるのではないでしょうか。
自転車は、正しく使えばこれほど安全、快適で便利な乗り物はありません。
しかし、駐輪場や走行空間の不足、逆走や歩道走行などの誤った使い方があり、このような悪い一面が過度に注目されている感があります。環境対策と言えば必ず盛り込まれる自転車利用促進策が、川崎市条例案では全く出てこないのは、そのためなのでしょうか。残念でなりません。
当会で実施している交通アンケートでも、自転車は市民にもっとも支持されている交通手段のひとつです。それを積極的に活用できないのは残念です。誤った使い方があるなら正し、足りないものは補い、工夫して、自転車を前向きに活用することを明確に謳い、計画にその具体策を盛り込んで実施すれば、生活習慣を大きく変えることなく、市民生活がもっと快適で健康なものになると思いませんか。まさに「川崎市の特徴を踏まえ」て市民も地球環境も幸せになれる政策です。
川崎市でも、丘陵部などを中心に「クルマ社会」が進んできてしまっています。そうした地域にお住まいの方々に、極力不便をかけずに安心して「脱マイカー」を進めていただけるよう、各種施策を展開して環境にやさしい生活をする人を応援しましょう。
ところで、他の自治体に比べて極めて交通が便利で不自由しない川崎市ですが、マイカーを持っている人が少なくありません。これについて当会で検討したところ、クルマが無いと「不安」を感じるのではないか、という意見が出ました。
そこで、たとえば保育園送迎などに比較的安価に利用できる子どもの乗り合い送迎タクシー、高齢者が気軽に利用できる介護タクシー、誰でも気軽に利用できて便利なコミュニティバスなどが有効かもしれません。 これらには少しの予算がかかりますが、道路を造るよりはるかに安く、しかも交通事故や渋滞の緩和にも貢献し、人と環境にやさしいまちづくりに有意義なはずです。
人と環境、おサイフにもやさしい交通体系に転換するため、「マイカーが無くても安心のまち」になるための具体策を実施してください。
川崎市はヒートアイランド化が県内で最も深刻な地域のひとつで、自動車や道路・駐車場面積の増加がその主因のひとつになっていると考えられています。
また、先進的な環境基本条例を有し、工場排煙などの公害は克服した川崎市も、自動車公害は未だ克服できておらず、PM2.5濃度はWHOガイドラインの3倍超(2006年度の二子、池上の各自排局)、喘息有症者数が18年で3倍に増える(1986〜2004年度の人口あたり市内有症者数)など、深刻な事態が続いています。
そのために、「エコ運搬制度」や事業用車の電気自動車への切り替えなど新たな取り組みも準備されており、そうした取り組みには期待されるところですが、たとえば「電気自動車」も(国や県のように)マイカー補助金のように機能すれば公共交通利用促進に逆行しますし、事業用車であっても減らせるなら減らすべきですから、制度設計に際してはたとえば自家用乗用車へは「エコカー」優遇策を実施しないなど、自動車優遇策にならないような細心の注意を求めます。
まずはその手本となるよう、市には公用車のうち乗用車を全てカーシェアリングにして総量も削減する、市バスや清掃車などには積極的に環境配慮車を投入する、といった、メリハリの効いた施策を求めます。
市民活動をはじめると、環境問題に熱心に取り組む市内の市民団体が少なくないのだと感じました。その活動領域も実に多様で、環境にやさしい活動を概ね網羅しているのではと思えるほどメニューに富んでいます。もちろん個人で取り組んでいる方も多いでしょう。
しかし、今の様々な制度では、残念ながら、環境にやさしい選択をする人が必ずしも得をするわけではなく、むしろ環境にやさしい選択をする人は自腹を切って苦労をせねばならない状況。交通分野でいえば、環境にやさしい路線バスに乗る人はぎゅう詰めの車内に長時間詰め込まれ、その横を不要不急のマイカーが悠然と抜き去ってゆきます。違法駐車もほとんど取り締まられず、市役所通り・富士見通りのバス優先レーンは違法駐車で埋まっていて、バスはノロノロ運転を余儀なくされてダイヤも守れない。これでは環境にやさしい選択をする人が損をしてしまいます。
こうした状況を看過することなく、「市は、環境にやさしい選択をする市民を全力で応援する」ことを明文化してください。
本案では、自主的計画とその取り組み推進が柱になっていますが、こうした取り組みに実効性を担保するためには、市内の事業活動の状況を適切に把握でき、第三者が検証可能な形にすることが必要と考えます。
たとえば、市への提出が義務づけられる対策の計画・報告書については、これを原則公開にすることや、市の温暖化対策計画策定・実施に必要な情報(たとえば、電力消費量の地域分布や公共交通事業者の利用者数、これらの原単位、高速道路の通行量など)を持つ事業者に公開義務を課すことで、取り組みをより効果的で実効あるものにすることができると考えます。
なお、本案で削減計画の実施が課される事業者のうち、「100台以上の自動車を使用する事業者」には、路線バスなど、利用が進めば環境対策に有効と考えられる事業者も含まれてくると考えられますが、こうした事業者については温室効果ガスの削減ばかりでなく、むしろ利用を増やすための計画策定・実施を求めることができるよう、要望します。