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自転車活用推進計画(案)」への意見書

2018年05月10日提出

我が国では元より都市部を中心に自転車が多く利用されており、また様々な都市問題の緩和・解消に資する自転車の活用は、世界的な潮流にもなっているところであり、「自転車活用推進法」および本案が掲げる理念・政策は時宜を得たものであり、賛意を表したい。

とりわけ、本案で掲げる「短中距離の自家用車利用を、公共交通機関の利用との組み合わせを含めた自転車の利用へ転換することが重要」とはまさに同意するところであり、日本の都市を「自転車フレンドリーな先進都市」へと変貌させることを切に望みたい。

そのため、本案について検討し、次の通り意見を申し述べる。

自動車駐車場の自転車駐輪場への転換を促す法改正を

都市部において駐輪場の確保は、自転車利用の促進に資するものと考えるが、それについて本案では、鉄道事業者へのさらなる土地提供を求める内容になっている。それが出来るに越したことはないが、ただでさえ密集した都市部において、新たな土地を確保することは難しい状況にあり、これだけが頼りでは、駐輪場確保は絵に描いた餅になってしまいかねない。

かように密集した大都市においては、とりわけ公共交通および自転車の代表交通手段分担率が高く、自動車分担率は低いがために、駐車場法およびそれを根拠とする条例により過剰に確保された自動車駐車場がだぶついている一方で、自転車駐輪場が過少となっている状況である。

そこで、現在は「自動車」だけを対象にしている駐車場法を、車両全般を対象とするよう改正するとともに、既存の自動車駐車場を自転車駐輪場へと転換を促すよう求めたい。

また、本案でも問題になっているパーキングメーターや路上への駐輪施設の設置についても、駐車場法の改正により促進できよう。

本案で掲げられている自転車通勤の促進においても、大都市部ではまずもって駐輪施設の不足が足枷になっている状況もある中で、大都市における自動車駐車場の自転車駐輪場への転換は、多方面に大きな効果をもたらすことが期待され、ぜひ取り組んでいただきたい。

安全教育・取り締まり強化はまず自動車利用者に

安全教育について、その必要性は大いに賛同するところだが、対象者は自転車利用者だけに留まらず、まずもって自動車利用者への再教育が必要である。

同様に、自転車利用者の法令違反への対策だけに留まらず、自動車利用者の法令違反(速度超過、違法駐車、警笛の不正使用、幅寄せ・あおり行為など)の取り締まり強化・厳罰化が必要である。

自転車利用者の立場に立った安全教育を

学校における交通安全教育についても、自転車利用者の立場に立った手法で行われるべきである。例えば、現在盛んに実施されているスケアードストレートのようなクルマ目線のものは、自転車利用者に恐怖心を植え付けるばかりで、むしろ委縮効果が高いと指摘されている。自転車の活用を推進するという本案の趣旨に鑑みれば、ダメなことを殊更強調する手法ではなく、どうすれば安全・快適に走れるかを念頭に置いた教育に重点が置かれるべきである。

企業等の従業員へのルール研修を

自転車通勤やシェアサイクルが増加すれば、通勤や業務においても自転車の利用が増えると考えられる。学校だけに留まらず、行政機関や企業等においても自転車ルール研修を定期的に実施するよう求めたい。

自治体担当者への教育を

自治体等で自転車政策に携わる職員は本庁よりも地域に根差した部署であることが多いが、市町村のそうした現場へ赴くと、職員がいまだに「自転車は歩道」「自転車は子どものためのもの」などと思い込んでいる例も散見されるなど、現場における意識の隔たりの大きさは解消されていない状況にある。関係者のスキルアップにおいては、本案で掲げられているような関心の高い関係者向けのスキルアップと同時に、そうした場に積極的に参加しないような関係者を押し上げるための取り組みも必要と考える。

「サイクリングロード」等への自転車歩行者道の規制解消を

本案に掲げられた「安全に自転車に乗れる環境の創出」に期待したいところだが、既存の「サイクリングロード」などとして供用されている道路が自転車歩行者道であるなど、実際には歩道であり自転車が快適に走れる状況ではない道路が多分に存在する状況にある。本案でも掲げられているように、歩行者と自転車は分離される方が望ましく、分離されない所では歩行者が最優先であるから、これらの道路は本来サイクリングロードではないことになる。

このような現状の矛盾を解消するための施策を入れていただきたい。

「自転車車線」の幅員確保を

「自転車車線」の設置については歓迎するところだが、その幅が狭くならないよう求めたい。本案では「普通自転車専用」とされているが、実態として宅配等の台車を付けた自転車や、地域によっては自転車タクシーなどと呼ばれる大型の軽車両も走行しており、今後はタンデムを含めた多様な軽車両の活躍が期待される。また自転車は老若男女幅広い人に利用されている乗り物のため、速度域に幅があり、自動車以上に追い越し等が頻繁に発生するし、ふらつきも生じやすい。こうした多様な自転車が円滑かつ快適に走行できるよう、十分な幅員が確保されるよう求める。

自動車の速度違反の取り締まり強化を

自転車利用者が車道走行を嫌がる主な理由が、自動車の脅威である。自動車の衝撃力はとても大きく、とりわけ速度の2乗に比例して大きくなる。速度超過の取り締まりを強化するとともに、免許証更新時などの機会に自動車利用者に速度による危険を再教育するなど、速度違反が常態化している状況を改めるための施策を盛り込むよう求める。

歩道の柵の撤去を

我が国ではやたらと歩道に歩行者を閉じ込めるための柵が設置されているが、景観を害することに加え、単路部分には柵があるためにタクシー等の交差点内違法停車が発生し、自転車が危険にさらされるなど、悪影響が甚大である。本案にはなぜか無電柱化が掲げられているが、まずは柵の撤去を求めたい。

自転車通勤の推進は論より証拠で

本人が望めば自転車通勤ができる環境づくりを行っていただきたいが、本案を見ると、そのための課題がまだ具体的に認識されていないようにも見受けられた。自転車通勤を妨げる要因を浮き彫りにするためにも、また課題を乗り越えた前例をつくるためにも、ここは数値目標を掲げて、まずは国土交通省をはじめとする中央省庁に勤務する職員のうち希望者全員が自転車通勤できるようにすることを目標に掲げてはどうか。

シェアサイクルの促進について

シェアサイクルのサイクルポート設置数の目標値が示されているが、全国でこの数字だとすると低すぎるのではないか。2017年度もサイクルポートは大幅に増えており、近頃はコンビニエンスストア店頭などに小規模なポートが増える傾向にあるようだ。ポートの規模も数十台から数台まで幅がある中で、全国のポート設置数を指標とするのは適切なのだろうか。

そもそも全国津々浦々に設置する性格のものでもないので、例えば、大都市における面積あたりの設置箇所数、または昼間人口あたりの自転車稼働台数を設定してはどうか。

シェアサイクルについては、自治体主導のサービスに加え、民間主導のサービスが登場しつつある。特段の規制等の無い業態であるし、事業者の創意工夫を妨げないよう配慮は必要だが、公共性に鑑みて、今後は自治体だけでなく民間事業者も含めた情報交換ができる場が必要ではないか。

以上

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