持続可能な地域交通を考える会 > 意見書 > 『川崎市総合都市交通計画』骨子案 |
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この度の「川崎市総合都市交通計画」策定に際し、社会情勢の転換期を迎えた私たちにとり、時宜を得た重要な計画立案であると認識しています。
本会では、本年 5月30日に公開された中間取りまとめ(骨子案)を受けて、市主催説明会に会員が参加するとともに、本会および他団体と連携しての勉強会を開催するなど、議論を重ねてまいりました。 その結果を踏まえ、下記の通りご意見を申し上げます。
2010年10月15日に麻生市民館で開催されたタウンミーティングで市長は「川崎市は私交通よりも公共交通を優先する施策をとる」と明言されています。この方針を具体化するためには、現行の予算や道路面積等の配分を改める必要があります。
ところが、骨子案に掲げられた具体策は概して総花的で、全て出来れば良いですが、実際には社会情勢を鑑みて、予算や人・土地などの制約から優先順位を付けねばなりません。 出来れば良い事はたくさんありますが、実際に形していくための優先順位を付けるのが、この計画の役割だと考えます。
新総合計画などの既存計画に掲げられた題目をただ並べるだけではなく、骨子案p6に掲げられた理念を実現させるために、どう優先順位をつけ、いつまでに何をどう変えることで、3つの理念を実現するのか。順番と期日の目標を明確にすることで、計画策定後の工程管理や検証が可能な計画にすることが必要と考えます。
骨子案p5では、本計画の上位に『川崎市基本構想』が位置づけられ、まちづくりの基本目標が「誰もがいきいきと心豊かに暮らせる持続可能な市民都市かわさき」であると明記されています。
ここにある「持続可能性」とは、地球環境に配慮することはもちろんですが、それだけに留まらず、環境(地球環境および地域の公害等の問題を含む)、地域社会(健康、福祉など)、経済(市民生活)の3つをバランスを取って考えることが重要です。
しかし、本骨子案では、構造物(ハード)の施策が目立つ一方、ソフト面(施策、運営の改善、人材育成、市民参画)が弱く、バランスが取れていないように感じられます。
川崎市の街はすでに出来上がっているので、壊して作り直すのは費用がかかり、市民生活への影響も大きく、現実的でありません。今ある鉄道、道路、設備を活かしながら、配分を変えるなど工夫をして、主にソフト面の取り組みによりこれらの既存インフラをどう活かしていくのか、を具体策の主軸に据えるべきです。
一例として、ドイツなどは自転車が公共交通に準ずるものと位置づけられていますが、その自転車の安全で快適な利用を促進するため、主要交差点には自転車専用の信号機が付いています。自転車は走り出すのに時間がかかるので、自転車の方を先に青にする事で、自転車利用者にはもちろん、自動車利用者のも安全・安心を提供しています。他にも、道路脇に違法駐車する車両は即座にレッカー移動し罰金を課す、駅前や繁華街は日中の自動車通行を制限して歩行者が安心・快適に歩けるようにする、といった施策も取られています。
こうした取り組みはソフトで出来る事。そうすれば歩行者や自転車が安全・快適になり、市民生活の向上と、自動車からの転換を促し、政策目標の達成に寄与しています。
こうしたソフト面(人・施策・運営改善・市民参画)の取り組みを充実させることで、市の方針である「安全で快適に暮らせるまちづくり」を実現していくよう求めます。
高齢化が進むにつれ、公共交通に対するニーズも変化しつつあります。本骨子案では、今後は通過交通や内外交通に対し、内々交通の重要さが増すものと推計していますが、これを単なる目的地の変更と考えるのではなく、交通手段に対する要望の変化にも注視する必要があります。
たとえば、高津駅〜溝の口駅、武蔵小杉〜中原〜新城〜溝ノ口駅、のように、鉄道とバスが並行している区間で、若い世代は早くて安い電車を選びますが、高齢者を中心に、時間のかかるバスを選ぶ人が増えています。また、幸区〜川崎駅東口のように、階段やエレベータを使わずに直接市街地へ出られるバスを求める声があります。 こうした声は、高齢化社会の象徴と感じています。単に交通手段があればいいのではなく、地上で乗り降りできることが重視されているのです。
これに対して、骨子案では鉄道の高架化・地下化の計画が多く掲げられていますが、これらは自動車利用者にとっては良いかもしれないが、鉄道利用者の利便向上にはつながらず、むしろ高齢化時代を迎える市民にやさしくない施策とも言えます。いたずらにエレベータを増やせばいいというものではなく、跨線橋を使わずにホームへ出られる構造に改めるべきです。
例えば、JR南武線の地上区間では、市が補助して跨線橋にエレベータを付けていますが、むしろ対向式ホームの両側に改札口を付ける(ために補助する)ことで、乗客の利便性が高まり、省力化にもつながります。近隣では、東急大井町線、多摩川線、池上線などで実施され、少ない費用で高い利便性を提供しています。
高齢化時代に「誰もが利用しやすい」「安全・安心かつ円滑」で「持続可能」な駅・鉄道にするためには、エネルギーを使わず人にやさしい地上駅を残したまま、利用者が円滑に利用できる鉄道へと改修することに、補助等をすべきと考えます。
骨子案を見ると、鉄道の地下化や地下鉄が多く位置づけられている一方、地上の幹線公共交通については無策のようです。
既存の鉄道はみな東京に向かっており、東京に人を運ぶことを中心に考えられています。幸い、川崎市にはJR南武線が通っており、南武線が川崎市の連帯を支えたと言っても過言でないと思いますが、その南武線に対する市や市民の意識はいまいち低かったように感じられます。
川崎市という単位で考えたとき、東京中心の仕組みのままでいいのか?今後は、市内で人がふれあい経済が活性化するような仕組みが求められているのだと思います。
しかし、現行計画にある地下鉄は、人口140万の川崎市にとっても負担が大きく、川崎市の軸であるべき南武線と客を奪い合い、地下水など環境配慮の面でも課題があります。一方、既存施設の改良や、地上の公共交通整備であれば建設費が安く済み、利用者が乗り降りしやすく、街に近いことから便利かつ円滑な利用ができる、優れた特性があります。つまり、地上の公共交通を優先することで、整備維持にかかる費用に対して市民が得られる効果を高くすることができます。
2010年10月21日に高津市民館で開催されたタウンミーティングでは、今後は「少子高齢化」の時代であり、高齢者や怪我をした人なども含め、誰もがいきいきと暮らせるまちづくりを実現するためには、地上の公共交通を誰もが便利で快適に利用できる仕組みづくりが欠かせない旨、本会会員より質問しました。これに対し市長からは、公共交通優先の考え方は全くそのとおりであり、具体的なしくみはこれから、という回答でした。
しかし、今回の骨子案を見ても、2010年当時の新総合計画から変わった所は無く、具体的な仕組みが入っていないように見受けられます。ついては、上記のような特長を備えた地上の公共交通を重視する仕組みを計画に盛り込むよう求めます。
本骨子案の説明会にて、会場より、臨海部の中量幹線交通を効果的に改善する案として、LRT (Light Rail Transit) を導入する提案が出されました。本会でも、この提案を全面的に支持します。
その質問に対する回答は「現時点で導入空間を想定できない」というものでした。 しかし、本計画は3年計画の新総合計画とは違い、20年の計画期間を持っています。現時点で検討すらされないとすれば、20年間、何をするのでしょう?提案内容が良いのであれば、今のうちから導入の調査などを始めるべきです。臨海部などの幹線バス路線を改善する手法としてLRT・BRTの活用を含めた調査・検討を始めるよう求めます。
具体的には、朝ラッシュ時は毎時100往復以上の路線バスが行き交う、川崎区の大動脈であるとともに、川崎市の顔でもある、市役所通り・富士見通りへの終日バス専用レーンの導入、およびBRT・LRTの導入を検討開始するよう提案します。
特にLRTは、「環境先進都市」を目指す地方政府・自治体では、LRTが看板になるものです。人口20万人超、今でも公共交通が多く利用されている川崎区で、LRTが実現すれば、市民や企業の利便向上はもちろん、「環境先進都市」の顔としても相応しいものになるでしょう。
これまで全国各地で「渋滞対策」の名目でバイパス建設や交差点拡大などが繰り返されてきました。これらは一時的には混雑を緩和するように見えますが、同時に誘発需要を生み出すことで、自動車利用を増加させ、さらなる混雑を招くことが知られています。
骨子案では「道路整備を推進します」という言葉が10ヶ所も登場し、骨子案において最多の具体策は「道路整備」というありさまです。しかし、自動車走行空間を増やすことにより誘発交通を発生させ、移動の円滑化や安全対策には逆効果となります。むしろ車線を減少し、自転車・路線バス専用レーンを確保する事による、実質的な渋滞対策を行うよう求めます。
本骨子案、およびその関連計画である『都市計画マスタープラン』や『川崎市の道路整備プログラム』などでは、「高度経済成長」時代に作られた道路計画が今なお引き継がれています。 しかし、現在直面している問題は少子高齢化や地球温暖化など、道路計画が作られた後に顕在化したものです。さらに、実際に多くの市民に選ばれている自転車の走行空間確保も課題になっていますが、これらが現行の道路計画では欠落しています。
例えば、最近延伸された都市計画道路宮内新横浜線では、自動車車線が広く取られ、違法駐車場と化している一方で、歩道は狭く、自転車レーンに至っては全く無い状況です。バスもほとんど走りません。多くの住民を立ち退かせ、人口密度の高い川崎市の貴重な土地を、このような無駄な道路に割くような計画は改めねばなりません。
まちづくりは「百年の計」とも言われますが、こと交通インフラは、今整備したものが今後50年、100年と使われ続け、市民生活に密着したものになってゆきます。 クルマ優先思想の昭和時代に描かれた古い計画がそのまま残っている状況では、いくら本計画で良い理念を掲げていても、看板を掛け替えただけで中身は昔と変わらない、という事態になってしまいかねません。 ついては、特に本計画の下位計画である『道路整備プログラム』について、21世紀型の新しい社会課題に対応できるよう、その抜本的見直しを行うよう求めます。
このように、昭和時代に作られた既存の道路計画は前提条件が大きく変わっていることを受けて、新しい社会課題に対応するよう抜本的に見直すとともに、既存の道路においても、バス・自転車レーンを広く取り、マイカー走行空間は狭めるよう求めます。
骨子案では、交通分野において「地球環境」以外の環境問題は存在しないように見えますが、これでは現実に起きている問題が正しく認識されているとは言えません。
自動車は今もなお大気汚染・騒音等の公害発生源になっています。こうした自動車公害の存在を認め、なくしていく政策が必要です。川崎市では環境基本計画において、早くから、自動車の利用を減らし公共交通や自転車への転換をすすめることが求められていました。
このように、移動排出源(自動車)からの公害は対策の必要性は明らかであり、しかし具体的対策が進んでおらず、最近では北部地域で深刻化している状況にあることが、市の成人ぜん息患者医療費助成事業などから明らかです。
当然、本計画においても、川崎市環境基本条例の基本的施策にも位置づけらている自動車公害の防止を明確に位置づけ、誘発交通の抑制、通過交通対策の2点を重視した対策を行う必要があるでしょうが、骨子案からは欠落しています。
重点施策の中の「電気自動車等の次世代自動車」の導入・利用促進について、自家用乗用車がこの対象に含まれた場合、極めて投資効率が悪い上、自転車や公共交通の利用を阻害する要因にもなります。よって、自家用乗用車はこの対象に含めないよう求めます。
自家用乗用車は走行距離が短く、しかも車両本体に加え充電スタンド等のインフラ整備にも莫大な費用がかかると見られていますが、こうしたものに公金で補助等することは政策的に非効率ですし、同程度の補助が得られない自転車や公共交通利用者にとっては逆インセンティヴとなってしまいます。本来は他の推奨すべき交通手段への転換を求めることにこそ、人や資金などの資源を集中投入すべきです。
さらに、昨年3月11日に起きた原子力発電所の事故を受けて、従来のエネルギー政策が破綻し、今は「脱原発依存」を掲げてエネルギー政策の見直しが行われている最中です。 今後は省エネ目標を積み増しながら再生可能エネルギー中心の一次エネルギー構造に転換していく必要性が叫ばれている中で、いたずらな電気自動車の促進策は、脱原発依存に逆行します。エネルギー大量浪費を前提とする自家用乗用車の仕組みを温存したまま、安易に「電気自動車」に切り替える施策を行うことは、エネルギー安全保障の観点からも極めて問題が大きく、全く持続可能な施策ではありません。
そもそも、内燃機関の電化(モーター化)により効率が向上するのは他の車両でも同じですから、公共交通手段や自転車利用で代替することができる自家用乗用車は対象から外し、代替が困難で利用頻度の高い車両に集中投資することが望ましいと考えます。 具体的には、電動アシスト自転車、新聞や郵便の配達用電動オートバイ、端末宅配用の軽貨物自動車、路線バスなどの公共車両、および緊急車両などへの支援を行うことは有意義であると考えます。
また、単体の車両対策に留まらず、中心市街地では商店街等が主体となって貨物の共同配送の仕組みを構築する取り組みを支援するとか、市内の市民団体が主体となって実際に進められている廃食油回収・バイオディーゼル燃料化の取り組みを支援するといった方法も有意義です。
少ない費用でより高い効果を期待できる取り組みは少なくありません。安易な「電気自動車」推奨政策は行わず、エネルギーの外部依存を減らすために、投資効率が高く効果的な施策を選んで投資するよう求めます。
また、より効果の高い投資を行うために、交通にかかるエネルギー消費を○%減らす、等の数値目標を立てて取り組むことも効果的と考えます。
川崎市内の代表交通手段分担率(平成20年 東京都市圏パーソントリップ調査)を見ると、徒歩、自転車、バス、電車を合わせて80%にのぼり、今でも多くの市民は、人と環境にやさしい交通手段を選んでいる状況と言えます。また、「住み替えるときに重視する交通手段の利便性」アンケート調査(平成20年 東京都市圏パーソントリップ調査)によると、川崎市などに住む人の86%が、住む場所を選ぶときに徒歩、自転車、バス、鉄道の利便性を重視すると回答しています。
つまり、私たち市民にはもちろん、新たに市民になる人からも、クルマではなく、電車やバス、自転車の利便性や、快適に歩けるまちづくりが求められています。
21世紀に入って10年あまりが経ち、これからの時代はクルマはむしろ不便にしてでも、歩く人や自転車、地上の電車やバスを充実させて、誰もが安全で快適に移動できるまちが、世界でも評価される時代になりました。
ところが、骨子案に掲げられた具体策を見ると、最多の具体策が「道路整備」という事で、つまり市民の86%が望む交通手段の利便性向上策よりも、市民の14%が望むクルマ利用促進策が行われている有り様です。20%のための道路整備に予算を傾注し続ける一方で、80%の市民のための交通政策は、残念ながらほとんど見当たらない現状です。
幸か不幸か、欧米に比べて日本では公共交通や歩行者・自転車を重視した交通政策が全国的に遅れています。川崎市はクルマ依存度が比較的低く、狭い道路が多くクルマ利用には不便な都市構造ですから、これは優れた点なのだと発想を転換すれば、道路整備を減らして公共交通や自転車、歩行空間の拡充などへと投資を振り替えることで、川崎市は世界最高の都市になる可能性が高いとも言えます。
歩行者優先・クルマ非優先の狭い路地は、世界の最先端である「コンパクトシティ」の特徴のひとつです。市が「道路整備」を行い、クルマを便利にするほど、その特長は失われてしまいます。川崎市の特長である「コンパクトシティ」をさらに便利で快適にするためには、従来型の道路整備を抜本的に見直し、歩行者、自転車や電車・バスを利用する人のための政策へと転換するよう求めます。
「安全・安心歩行空間」は、自動車への対策を中心に据えるよう求めます。
本来、歩行者の最大の脅威は自動車です。日本では欧米諸国に比べ、自動車乗車中よりも歩行者・自転車利用者が亡くなる割合が極端に高い状況(右図)で、道路構造を歩行者・自転車利用者が優先されるように変えることが重要です。具体策として、商店街への車両侵入制限や、住宅街全体のゾーン30・ゾーン20化などを行うべきです。
また、骨子案で掲げられている「歩車分離」は、幹線道路や交差点の信号機などでは有意義ですが、道路延長の大半を占める生活道路(区画道路、取付道路、私道などを含む)では非現実的であり、むしろ狭い歩道を造って歩行者を押し込めるようでは、逆効果にもなってしまいます。
骨子案では、現実に大多数である歩車混合の生活道路における歩行者の安全確保策は全く存在しない状況ですが、歩車混合の生活道路においては、分離を前提とするのではなく、ゾーン20(区画内全域の自動車の通行速度を20km/h以内に制限するとともに、通過交通の排除、違反をさせないためのクランク、ハンプ、ポラード等を設置した街区)に指定し、自動車交通を抑制するための整備を行うよう求めます。
また、「あんしん歩行エリア」に指定されている商店街では日中の自動車走行を(緊急車両および区画内に荷物を配達する車両の徐行での通行を除き)全面禁止する、スクールゾーン指定されている道路において30km/h制限を行う、といった措置を取るべきです。
このような施策を組み合わせることで、川崎市では歩行者・自転車利用者が被害者となる事故をゼロにすることを目標に、全市を挙げて様々な施策を総動員することを求めます。
多くの市民に選ばれている自転車は、環境負荷が低く、正しく乗れば安全で、外部エネルギーを使わず、健康によく、道路面積の占有も少ない、川崎市のような密集した都市では非常に望ましい交通手段と言えます。 ところが、今回の計画案を見ると、自転車のマイナス面ばかりが強調され、自転車の良い面に全く触れられていないなど、自転車の利点が全く評価されていません。
個人にとっても、地域にとっても、利用促進が望ましい交通手段である自転車を、安全かつ快適に利用できるようにするために、道路構造を改めることに加え、自転車の利用を正しく促進することが必要です。
川崎市は比較的若い世代が多く住んでいますが、そうした世代のマイカー利用が目立っています。クルマより自転車の方が便利な道路構造にすることで、自家用車で買物や公共施設等に出掛けていた人を自転車に転換させるといった効果も期待できます。 自転車利用が便利になるよう道路構造を改めること、マイカー利用を自転車に転換させること、自転車に正しく乗れるよう小中学校での自転車教室を実施することなど、自転車利用を促進する方向性とその具体策を、計画に明記するよう求めます。
川崎市内は比較的鉄道網が充実している地域ですが、川崎区、幸区、宮前区、麻生区など、路線バスが市民の足を担っている地域も多くあります。特に、川崎区の塩浜方面から川崎駅に出る路線や、高津区久末・宮前区野川から武蔵小杉駅や鷺沼駅に出る路線、宮前区向丘地区から溝口駅南口へ出る路線は幹線になっており、毎日何万人もの市民に利用されています。
ところが、例えば川崎区浮島・殿町・塩浜から川崎駅に至る路線が運行する富士見通り(市役所通り)では、片側3車線ある道路の左端がバス優先レーンになっているにも関わらず違法駐車が横行しており、路線バスが定時運行できず、バス利用者は大変な不便を強いられています。川崎駅から多くの企業が立地する臨海部に向かうビジネスマンにとっての機会損失も図り知れません。
他市では、たとえば県内の藤沢市や厚木市、千葉県千葉市などでは、幹線バス路線では快適に乗車できる連接バスを運行していますし、東京都など各地では日中時間帯でもPTPS(公共車両優先信号システム)を提供し、一般車ではなく路線バスを優先しています。
本計画においても、バス優先レーンを専用レーンにする、PTPSを日中時間も運用する、片側2車線以上ある道路では1車線をバス・自転車・緊急車両専用レーンにするといった施策により、幹線道路上での公共車両優先の姿勢を明確に打ち出し、路線バスの定時運行の確保や利用促進、救急車の搬送時間の短縮などに資する施策を実施するよう求めます。
川崎市内の多くの地域では鉄道がとても便利ですが、高齢化が進むにつれて、最寄りの駅やバス停に出るまでの足が課題になる場合が増えています。 こうした事態を把握し、川崎市でもコミュニティ交通の導入支援に取り組まれており、今年から麻生区「山ゆり号」の運行が始まるなど、成果が出始めていますが、一方で課題もあり、コミュニティ交通を充実させるための課題も見えてきました。
ところで、本骨子案の説明会会場にて、市の支援策の一環として、予備車両を共通化し、試験運行にも使えるようにすべきという意見が出ていました。これはとても良い案であり、前向きに検討すべきものと考えます。
また、現在の市の支援制度は初期費用までで、その後の運営は全て事業者や地域住民の責に帰す形となり、これでは走り出した後は民間バス事業と変わりません。 しかし、コミュニティ交通は元々採算性が悪く民間事業者が参入できない地域で運行されています。公共交通は市民館や街灯などと同じ、地域の公共施設として捉えるべきものと考え、地域の努力も必要ですが、市も責任主体のひとつとして、事務局の役割を担うとか、ある程度の責任分担をしていくことで、自ら頑張る地域にはより支援を手厚くすべきと考えます。
具体的には、初期費用までの支援に加え、1地域あたり上限を決めて運行費用の補助をしている東京都小平市のような例があります。ここでは運行実験期間を1年以上確保し、走らせながら事業として育てる取り組みを、市役所と地域住民が一緒になって行っています。
本骨子案では、誰もが利用しやすく、安全・安心で活発な活動を支える、持続可能な交通を目指すとあります。持続可能な仕組みをつくるためには、地域住民や事業者が過剰な負担を背負うのではなく、住民や事業者の努力を下支えする行政の役割が不可欠です。
他市の事例も参考にしながら、コミュニティ交通に対する現在の川崎市の支援体制をより拡充してゆくことを提案します。
骨子案5ページでは、本計画の上位に『川崎市基本構想』が位置づけられ、まちづくりの基本目標に「誰もがいきいきと心豊かに暮らせる持続可能な市民都市かわさき」と明記されています。
ここで掲げられている「市民都市かわさき」とは、市民が主役という意味に取れますが、骨子案策定段階の市民参加、骨子案の中での市民の位置づけ、ともに十分だったようには思えませんでした。
ついては、下記の工夫を行うことで、名実ともに市民が主役になるように求めます。
今回提供された骨子案は、関心が高く、より詳しく知りたい市民のための情報提供としては有意義ですが、一方で、特段関心が高いわけではないが当然利害関係者となる多くの一般市民に対しては、いまいち分かりにくい面があったようです。
また、学者などの専門家が読むような膨大で専門的な資料を、日々の生活に追われ多忙な一般市民にそのまま渡して読んでもらうのは、負担が大きい面もあります。
ついては、この骨子案の全体像を見通しやすくするために、この計画が出来ることで、市民の毎日の生活に欠かせない交通がどう変わるのか、結論を先に書く、図などを使って直感的に分かるようにする、といった工夫を求めます。
また、たとえばドイツなど欧州諸国の自治体では、1980年代など早い段階から、多様な市民参画に取り組まれてきたようで、自治体が各地で大小様々な規模のタウンミーティングを開催することに加え、総合計画や基本計画などを策定する時は、その立案段階から多くの市民を議論の場に招き入れ、意見交流を重ねて計画を作ってきていると聞きます。
今回の骨子案では市主催で3回の説明会が開かれましたが、今後はさらに市民団体等が主催する説明会にも協力するなど、より多く意見交換の場を設けていくことを求めます。
川崎市内には活発に活動する多くの市民団体があり、そうした市民団体の提供するサービスが、私たちの市民生活をより豊かなものにしていると言われます。しかし、実際の政策立案段階では、業界団体関係者や学者が重用されるのに比べ、現場で活躍している市民活動団体が政策立案に係わる機会は稀で、決まったことをやれと言われるだけの、下請け的な位置づけに終始している感があります。
また、川崎市は7区で各々、交通に関する課題は千差万別ですが、そうした地域の声を伝える公募の市民委員は3名しかおらず、地域の声が反映されているとも言えない状況です。
川崎市においても、計画の策定段階から、交通、まちづくり、環境など関連分野で活動している市民活動団体や、地域の事情を熟知した各区のまちづくり協議会などにも意見を求め、そうした市民活動団体の経験や現場感覚を施策に反映させるべきと考えます。